首相の言うように「募集」という言葉が特に狭い意味を持つことはあるか。結果は前提条件なしの「広く募り集めること」が85%超を占めました。納得しがたい振る舞いの目立つ現政権ですが、言葉の使い方にもそうした特徴が表れているようです。

「募集」という言葉の使い方について伺いました。

大多数は「募集」に広告が必須と考えず

「募集」の意味として適切なのは?
広く募り集めること 85.9%
単に募るのではなく新聞などで広告して募ること 14.1%

 

「募集」という言葉が特別に狭い意味を持つことはあるのか――結果は、前提条件なしの「広く募り集めること」が圧倒しました。

「桜を見る会」を巡る国会審議で飛び出した「募っているという認識で募集という認識ではなかった」という安倍晋三首相発言。募集と募るは同じという前提で格好のネタにされています。しかし、首相の言うところの「例えば新聞等に広告を出して『どうぞ』ということ」という「募集」の解釈も、実態としてそれなりに当たっているかもしれないと思い、伺ってみました。

聞き方として単に「『募集』と『募る』は同じと思いますか」だけだと、実は「違う」という答えが妥当かもしれません。というのは、「募る」には「恋しさが募る」など「ますますはげしくなる。激化する」という意味があり(岩波国語辞典第8版)、募集にはそれがないという違いがあるからです。

もっとも同辞典によると、この意味での「募」は当て字であり、本来は「広く招き集める」ということだそうです。こちらの意味に限定するため「募集」の意味を問う設問にし、選択肢は「広く募り集めること」と、首相の解釈に基づいた「単に募るのではなく新聞などで広告して募ること」の二つを用意しました。

「桜を見る会」は「自由に参加できる」?

アンケートの結果から見ても、やはり首相の解釈は無理だと大多数がとらえているということになりますが、言語学の専門家に言わせると微妙に異なる見解もあります。1月31日のウェブ版東京新聞によると

椙山女学園大の加藤主税名誉教授(言語学)は「募るも募集も意味は同じ」と説明。そのうえで「あえて直感的に言うと、募集する方が堅く、書類提出や意思表明などが必要な印象があり、募るは自由に参加できる感じ。その意味では、桜を見る会の実態は『募る』で合っているのでは」と解説する。

とのことです。「新聞などの広告」という言葉こそありませんが、首相の解釈に近いものを感じさせます。

新宿御苑の桜

 

しかし、本来「桜を見る会」は誰もが自由に参加できるというものではありません。ただ、首相事務所の選んだ人々と、彼らが申込書をコピーして配った人については自由に参加できるということで問題になっているのではないでしょうか。

「招待客」を「募る」ということが問題

この点について、「『募集』と『募る』の違いはどうでもいい」というタイトルで独自の見解を記すのがコラムニスト・小田嶋隆さんです(1月31日「日経ビジネス」電子版)。「これは二つの言葉の定義の問題ではない」「当たり前の話だが、『招待客を募集する』という言い方自体が、そもそも矛盾している」といいます。

首相官邸

 

「桜を見る会」への出席者は、最終的に、政府なり内閣府なり首相なりの責任で「選定」され、「招待」された人物であり「『安倍事務所の募集に応募して会に参加した後援会のメンバー』は、言葉の正確な意味において絶対に『招待客』ではあり得ない」。だから問題なのは「募集」ではない程度に「広く募った」からいいということではなく、「本来なら首相は『え? 招待客って、募ったり募集したりできるの?』という、より本質的かつ素朴な質問に答えなければならなかったはず」という主張です。

言葉の使い方に表れる現政権の特徴

確かに、招待者は「各界において功績、功労のあった方々」とされているはずなのに、なぜ、首相事務所が「コピーしてご利用ください」とどんどん後援会関係者などを募っていったのか。これこそ問われなければならない本質でしょう。

思い出せば、現政権は国語辞典の「戦闘」と自衛隊法上の「戦闘行為」は違うと閣議決定をしたり、「そもそも」の意味について国語辞典のアクロバティックな引用で閣議決定をしたりと、言葉の意味を都合良く解釈することをしばしば強行します。今回アンケートで伺った「募集する」という言葉の使い方に関しても、回答を通じて多くの皆さんの感覚が示された格好になり、普通に考えればおかしいと思われることでも無理に押し通す現政権の感覚が逆にあぶり出されていると感じます。

(2020年02月18日)



質問に際して

1月28日の衆院予算委員会で安倍晋三首相は「幅広く募る」ことと「募集する」ことは違うという認識を示しました。

「桜を見る会」の申込書を首相事務所が「コピーしてご利用ください」と記して支援者らに送ったことについて、共産党の宮本徹氏は「安倍首相になって『幅広く募る」ことを始めたのか。安倍事務所が募集していることはいつから知っていたか」と追及。首相は「幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と答弁したのです。

宮本氏が「『募る』と『募集する』は同じですよ。募集の『募』は募るという字ですよ」と突っ込むと、首相は「例えば新聞等に広告を出して『どうぞ』ということではない」と釈明しました。つまり、「募集」という言葉の条件として、新聞などに広告を出すことが必要という認識なのです。そうではなかったから「広く募っている」という見解です。

しかし、確認した限りでは「募集」に「広告などで」と前提条件を示す辞書は見当たりません。例えば角川必携国語辞典では「一般に呼びかけて希望者を集めること」という具合です。一方「募る」は「広く呼びかけて集める。募集する」と記され、「募る」と「募集する」が同義であることを示しています。

そこで今回の緊急アンケートとなりました。もし首相と同じ認識が圧倒的であれば、首相が言っているからということとは関係なく、辞書の記述が説明不足ということになるかもしれませんが、さて?

(2020年01月30日)

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