ウェブサイトに画像を上げるような場合の「はる」の表記は「貼る」が8割と多数を占めました。画面上の画像やファイルのアイコンなどは具体的に動かせる「物」として捉えられており、「貼る」の表記がなじむと考えられているようです。

ウェブサイトに画像データを上げる場合の言い回しについて伺いました。

「貼る」が8割占める

ウェブサイトに画像を「はる」――どう書きますか?
張る 10.4%
貼る 80.9%
はる 8.7%

 

「貼る」が8割を占めました。毎日新聞用語集では明確なルールを決めていないのですが、結果から見るに今回の質問のような場合には「貼る」で統一して差し支えないだろうと考えます。

広げる「張」、くっつく「貼」

白川静「字訓」(平凡社)は、はり付ける意味が含まれる場合の「はる」について、漢字は「張」のみを見出しに取っています。ただし、説明は「全体を強く引き、あるいは広げて、緊張した状態とすること。弓や網を張ることをいう。そのような弛(ゆる)みのない状態で、貼り付ける意にも用いる」と記しています。何かをぴんとのばしてくっつけることは「貼り付ける」でよいと示すようです。

加納喜光「常用漢字コア・イメージ辞典」(中央公論新社)も「張」について、「ぴんと張り渡すこと」から「長く伸びる」というのと同時に、「大きく広がる、開く、展開する」というイメージもあることを示します。「張り渡す」は取り付けることでもあるので、何かを広げて取り付ける、はり付ける意味にも使えそうです。「貼」については「占」の部分に「『一つのところに定着する』というイメージがあり、『くっつく』というイメージに展開する」としています。広げる「張」とくっつく「貼」、というところでしょうか。

多様な「張る」、意味の狭い「貼る」

一方で日本語の「はる」は意味の広い言葉です。どのような意味を持つか、森田良行「基礎日本語辞典」(角川書店)で「はる〔張る〕」を引くと、

「網を張る」「綱を張る」のように、たるんでいた物の両端に力を加え、ぴんと引き延ばして固定させること。張ることによって延び広がり、ある範囲をすっかり満たすようになる。これを現象面に視点を置いて眺めれば、ある力が現れ広がって限界へと近づく作用とも取れる。このような基本義から、状況によってさまざまの意味を派生させた。

とあります。「物をたるみのない形で固定させること」「ある範囲にすっかり広がること」「力が行き渡っていること」といったところでしょうか。毎日新聞用語集には「テントを張る」「氷が張る」「策略を張り巡らす」「張りのある声」といった用例が載っているのですが、なるほどと思います。

同辞典は細かい意味として「その場所に平面状の個体を密着させて固定し一面に覆う」という説明も載せています。そして「これは『紙を貼る』『ビラを貼る』の言い方へと発展する」とも。「はる」という言葉全体としては「張る」の表記を用いつつ、平面をくっつける意味については、発展的な言い方として「貼る」が可能だということでしょう。

もはや画像は具体的な「物」

上のような説明から思うことは「張る」という意味の範囲が広い言葉の中で、とくに限定的・具体的な意味として「貼る」が使われるということです。そしてアンケートの結果では大多数が、ウェブサイトに画像をアップするような場合は「貼る」を使うことを支持しています。

つまり、ディスプレー上の画像または画像ファイルのアイコン、あるいはリンク先の文字列のコピーといったものは、単なる電子データではなく、具体的な平たい「物」として意識されていて、それを指やポインターで動かす作業は紙などをのりでペタッとくっつけるような、「貼る」という具体的な行為である――そう考えられているようです。

用字の「正解」を探るという考え方から行くと、広い意味を持つ「張る」の方が抽象的な意味にも使えるので、電子データにも「張る」がよいということになるかもしれません。しかし実際にはもう、指などで動かせると感じる画像には「貼る」の方がなじむと多くの人が捉えていることは面白いと思いますし、新聞の用字もそうした新しさに対応していくのがよいだろうと考えます。

リンクは「張る」が使われる理由

ところでインターネットに関連する「はる」の用法としては、「リンクを張る」という例が毎日新聞用語集にも載っていると回答からの解説で紹介しました。こちらは国語辞典でも「はる」の項目中、「細長いものを一端から他端に、たるみのないように引き渡す」という説明に続けて「これの見立てで『リンクを―』が一九九〇年ごろから言い出された」(岩波国語辞典8版)とあります。平面ではなくロープを張るようなイメージでしょう。「見立て」とあるように、比喩的な、ある程度抽象化されたイメージであって、画像を「貼る」場合の具体的な捉え方とは違うということのようです。

(2020年02月21日)



質問に際して

「貼」という漢字は2010年の改定で常用漢字表に追加された文字の一つです。それまで新聞では、「はる」という動詞は基本的に「張る」と書くことにしていました。多くの国語辞典でも「張る」を主要な表記としており、それで不都合はなかったのです。

しかし「貼」が常用漢字になったため、「はる」も「貼る」と「張る」の間で使い分ける必要が生じました。基本的にはのりや接着剤でくっつける場合が「貼る」、それ以外は「張る」というものですが、今回取り上げた、ウェブサイトに画像データをアップロードするような場合も「はる」と言われます。それをどう書くか、正直に言って、私たちはまだはっきりした考えを持てずにいます。

インターネットに関連する用法では「リンクを張る」が毎日新聞用語集に載っていますが、それはまた違うものに見えます。

パソコンによる文章などの作成には「カット(またはコピー)・アンド・ペースト」が付きもの。文章や画像を指定して必要な場所に移動ないし複写する操作ですが、英語のペースト(paste)はのり付けすることを意味しますから、その伝でいけば「貼る」となりそうです。皆さんはどう書くか教えていただきたいと思います。

(2020年02月03日)

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