川があふれた際の表現には「氾濫」を選んだ人が8割強、「決壊」とした人が1割弱と大差がつきました。「内水氾濫」のような、堤防が無事でも起きる水害も注目されており、「氾濫」と「決壊」は明確に区別して使う必要があります。

川の水があふれたときに使う言葉について伺いました。

「氾濫」が大多数占める

大雨により川が〇〇した。どちらを使いますか?
氾濫 84.1%
決壊 6%
どちらも使う 9.9%

 

「氾濫」を選んだ人が8割強、「決壊」とした人が1割弱と、予想以上に大差がつく結果となりました。「川が決壊」と書いてくる原稿を非常によく目にすることもあり、こちらも認めるべきなのかと悩むこともありましたが、やはり直すべきだと自信になりました。

辞書は「氾濫」と「決壊」を明確に区別

回答から見られる解説で書いたように、「氾濫」は「河川の水が堤防からあふれ出ること」、「決壊」は「堤防などが破れてくずれること」(ともに大辞林4版)を表します。氾濫するのは「川の水」、決壊するのは「堤防」であり、主語に違いがあります。

「氾」と「濫」はともに「水があふれる」という意味を持つ漢字ですが、「決」には「切る、切れる」という意味があります。「角川新字源」(改訂新版)によれば、「決」は「水と、夬(えぐりとる)とから成り、堤防が水にえぐりとられる意を表す。転じて、とりきめる意に用いる」。えぐりとられて壊れるのは堤防ですから、やはり「川が決壊」ではなく「川の堤防が決壊」と書くのが適切でしょう。

堤防と無関係な「内水氾濫」も

さらに、近年では都市化により「河川の水」以外の氾濫も起こるようになりました。気象庁のホームページでは「氾濫」を「外水氾濫」と「内水氾濫」に分類して定義しています。「外水氾濫」は「河川の水位が上昇し、堤防を越えたり破堤するなどして堤防から水があふれ出ること」で、一般的な「氾濫」を指し、「内水氾濫」は「河川の水位の上昇や流域内の多量の降雨などにより、河川外における住宅地などの排水が困難となり浸水すること」を表します。

堤防が決壊して川の水が押し寄せたわけではなくても、豪雨によって排水溝やマンホールなどから街に水があふれた場合も氾濫として定義されるのです。昨年10月の台風19号の影響で多摩川の水が排水管を逆流し、川崎市の武蔵小杉で市街地が冠水した例は記憶に新しいと思います。また「外水氾濫」も、堤防を越える「越水」を含む用語であるため、必ずしも「破堤=決壊」が起こるというわけではありません。

「決壊」なら「堤防が」と書くべし

これを踏まえると、洪水が起こったという事実は同じでも、「決壊」は「外水氾濫」の一部に過ぎません。「決壊」を「氾濫」と言い換えることはできても、その逆はできないのです。新聞の見出しでは字数の制限上「〇〇川決壊」と書くこともありますが、「決壊」は堤防が壊れたことに重きを置いた表現である以上、やはり文章では「川の堤防が決壊」としたいところです。

「川が決壊」と書かれた記事をうっかり発信してしまわないよう気をつける一方で、何より、これ以上水害が起きることがないように願うばかりです。

(2020年02月04日)



質問に際して

2019年も災害が多い1年になってしまいました。夏場の相次ぐ台風被害を伝える記事で多く目にしたのが「川が氾濫」「川が決壊」したという表現です。

国語辞典を見ると、大辞林4版には「氾濫」は「河川の水が堤防からあふれ出ること」、「決壊」は「堤防などが破れてくずれること」とあり、他の辞書を見ても同様の説明がされています。

つまり「決壊」と「氾濫」は、どちらも洪水が発生することを表しますが、氾濫する(あふれる)のは川、決壊する(破れる)のは堤防であり、主語に違いがあります。それゆえ、「川が決壊した」と原稿に書かれている場合、「川が氾濫した」「川の堤防が決壊した」と直すようにしています。

ただ日々校閲をしていると、「川が決壊」も「川が氾濫」と同じくらい目にします。みなさんは「川が決壊」という表現に違和感があるかどうか、伺ってみようと思います。

(2020年01月16日)

 

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