「雄姿」は女性にも使えるか。「問題ない」が4割の一方、「勇姿がよい」が過半数でした。女性にも使うと明記する通信社の用語集がありますが、ジェンダーの観点から「女性の雄姿」が気になる人も多く、表現には一考の余地がありそうです。

女性に対して「雄姿」という表現を使うことについて伺いました。

「おかしい」という人は少数派だが…

「女性アスリートの雄姿」という表現をどう感じますか?
男女とも「雄姿」で問題ない 38.5%
おかしい。「雄姿」は男性にのみ使う 7.3%
性差が意識されない「勇姿」がよい 54.2%

 

「雄姿」は男性にのみ使うと考える人は1割に満たず、男女とも「雄姿」で問題ないとの意見が4割。しかしそれよりも「勇姿」がよいとする人が多く、過半数。ジェンダーの観点から「雄姿」が気になる人が多いという結果でした。

意味は近い「雄姿」と「勇姿」

日本新聞協会は表記を「雄姿」に統一すると定めており、毎日新聞も同様ですが、「勇姿」「雄姿」を使い分けている新聞・通信社もあります。

職場の辞書を見ると、ほとんどが「勇姿」「雄姿」を別の見出し語にしていました。岩波国語辞典8版(岩国)のみが「①【勇姿】勇み立った姿。勇敢な姿②【雄姿】雄々しく立派な姿」と同項目に並べて書いているぐらい。しかしこの説明を見ても、意味の重なる部分は多そうです。

岩波国語辞典

 

岩国には「甲子園に向かう母校選手の勇姿」という用例がありますが、「勇姿」「雄姿」を使い分けている時事通信の用語集は「入場する日本選手団の雄姿」と、ほぼ同様の文脈で「雄姿」を使っています。アンケートで過半数が「雄姿」を「勇姿」に置き換えても構わないと捉えていることを踏まえても、非常に近い言葉であることは間違いありません。

便利なのは人以外にも使える「雄姿」

ただし常に置き換え可能というわけではありません。岩国には「富士山が雲の上に雄姿を現す」という用例がありますが、このように富士山には「雄大」のニュアンスが出る「雄姿」が普通でしょう。時事通信の用語集では「勇姿」は人に限定して使うとしています。自然物について、「〔何か大事をなしとげようという気魄(きはく)が感じられる〕張り切った姿」(新明解国語辞典7版)などと説明される「勇姿」は確かにしっくりきません。「雄姿」は人と物の両方を表せるため、より広い場面で使えます。

共同通信記者ハンドブック13版

 

また回答時の解説でも触れましたが、共同通信用語集には「雄姿」は「女性にも使う」という注釈があります。実際に上の例文でも、男女ともにいる「日本選手団」に「雄姿」が使われていました。ならば人(男女)にも物にも使える「雄姿」に統一すればいいじゃないか――と思いたくなりますが、アンケートでは「雄姿」を避けようとする意見が予想以上に多くありました。

文字自体が帯びる性差、「排除」は非現実的

共同通信用語集の注釈は、2016年の最新版で加えられたものです。毎日新聞の記者と同様、「女性に使っていいの?」という疑問を持った人がいたのでしょう。また朝日新聞用語集は以前は「雄姿」に表記を統一していたものの、19年版で「『人の勇ましい姿』を特に指す場合は『勇姿』も」と書き加えられました。「女性の雄姿」に違和感を持っていた人は積極的に「勇姿」を使うことになるでしょう。用語集も、ジェンダーが意識されることの多い近年の傾向を反映しているのかもしれません。

19年の日本新聞協会・関西地区新聞用語懇談会では、「雌雄を決する」という表現をどうするか、というアンケートがとられ、各社悩んでいる様子が分かります(直す?「雌雄を決する」「軸をぶらさず」「(下位が上位を)下す」)。他にも「雄飛/雌伏」という表現はどうなのか、女性を「英雄」と表現してはいけないのか……など、問題になりそうな表現はいくらでも出てきてしまいます。これらを全て排除するのは現実的ではないでしょう。

迷う場合は表現に工夫を

それでも、今回のアンケート結果からは、避けられるならば避けるという判断もありではないかと考えさせられました。次に記者から「女性の雄姿って、どう?」と聞かれたら、「勇姿」は毎日新聞では使いませんが、「立派な姿」「堂々たる姿」など別の表現に変える手もありますよ、と提案してみようかと思います。

(2020年01月28日)



質問に際して

運動部のデスクから質問を受けました。女子マラソン選手が「メダルを獲得した雄姿」という表現について、「『雄姿』を女性に使うのはおかしいのでは」と疑問が呈されたとのこと。

その場では、性差を意識して使われるような言葉ではなく問題ないだろうと返答しました。辞書を引くと「雄々しく堂々たる姿」とあり、「雄々しい」は「男らしい。勇ましい。けなげだ」とあります(広辞苑7版)。「雄」だからといって男性にしか使えないわけではなさそうですが、「男らしい」というイメージを与えることは否めません。改めて考えると女性に使ってよいか迷います。

同音の「勇姿」は辞書では「いさましいすがた」(同)。毎日新聞ではこの表記を使わず、意味の近い「雄姿」に統一すると決めています。逆に「勇姿」にそろえれば悩まなくてすむのに……と思いながら他社の用語集を見てみると、共同通信社は「雄姿」と「勇姿」を使い分けており、「雄姿」は「堂々とした姿、女性にも使う」と明記していました。

ひとまず安心しましたが、実際にみなさんが受ける印象はいかがでしょうか。

(2020年01月09日)

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