「足蹴りする」という言い回しに対し、慣用表現の「足蹴(あしげ)にする」の方がよいという人が4分の3を占めました。「蹴ること」に相当する漢語がないため使われる「足蹴り」ですが、こなれていない言葉だということがうかがえます。

「足蹴りする」という言葉について伺いました。

「問題ない」は5%に届かず

「足蹴りする」という言葉、どう感じますか?
問題ない 4.5%
「足蹴(あしげ)にする」としたい 76.5%
「足で蹴る」としたい 5%
「蹴る」としたい 14%

 

「足蹴にする」を選んだ人が4分の3を占めました。「足蹴りする」で問題ないとした人は5%にも届かず、こなれていない言葉だということがうかがえます。

慣用表現は「足蹴にする」だが…

明鏡国語辞典2版では「足蹴」の項目で「語法」として「〔足蹴の〕『蹴(け)』は、下一段の文語動詞『蹴る』の連用形から。これを五段で使う『足蹴りにする』は今なお慣用になじまない」としています。「足蹴」は文語の形をとどめている慣用表現なので、単純に口語化して「足蹴り」にするのは今でもなじまない、ということでしょう。

明鏡2版

 

毎日新聞を含む新聞・通信各社の用語集も同様の立場を取っており「足蹴りにする→足蹴にする」といった書き換えを促しています。ただし、「~にする」以外でも「足蹴り」が出てくる場合はあり、それを認めるかどうかはまた別の話になると考えます。

国語辞典を見た中で「足蹴り」を見出し語に取っていたのは日本国語大辞典と大辞林、三省堂国語辞典。広く言葉を集めることを目的とした日国はともかくとして、他の辞書を見ると「(格闘技で)足で相手を蹴ること」(大辞林4版)、「〔格闘(カクトウ)技で〕足でけること」(三国7版)と、「格闘技で」と補っていることが目を引きます。辞書の編集に当たって集められた用例が格闘技に関するものだったのでしょうか。

「蹴ること」を意味する漢語がない

今回の質問のきっかけになったのは、先生が「生徒に足蹴りする体罰を加えた」というくだりを原稿で見たことでした。これを「生徒を足蹴にする~」としてよいかは少し迷います。「足蹴にする」は実際に蹴るという意味のほかに「ひどい仕打ちをすること」(明鏡2版)という慣用句としての意味があり、この方がよく使われるようにも思うからです。「足蹴にする体罰」とあれば、蹴ったという意味を取り損ねることはないかもしれませんが……。やはり重複感はあっても「足で蹴る体罰」で良かったか、と改めて思います。

「足蹴り」が使われるようになった事情の一つには、「蹴ること」に相当する漢語がないことがあるでしょう。殴ることに関しては「殴打」という語があるため、「平手で10回殴打」のような言い回しも見かけますが、蹴ったという場合には「10回足蹴り」となってしまうのかもしれません。慣用を外れると「足蹴」とは言いにくいのも分かります。「足蹴り」という言葉に違和感があったとしても、にわかに代わりの選択肢が見つからない、ということは大いにありそうです。

「足蹴り」を避けるためには

しかしアンケートの結果から見ても「足蹴り」の不人気ぶりは顕著で、可能なら使用を避けたい言葉だと考えます。回答から見られる解説でも取り上げましたが、厚生労働省のパワハラに関する指針案で、身体的な攻撃の例として「殴打、足蹴りを行うこと」というくだりがありました。ここは「殴ること、蹴ること」と書いて全く問題のない場面です。「足蹴りを行う」は一見してぎこちなく、もっと構えずに端的に書いてくれればよいのに、と感じます。

不格好になりがちな「足蹴り」を使わずに済ませるためには、最初から「足蹴り」という選択肢を排除して文を組み立てるのがよさそうです。「足蹴りする」は「蹴る」と言い換えて済む場合がほとんどですし、アンケートの結果から見て、慣用表現の「足蹴にする」がそぐう場面ならばそれを第1選択肢にするのもよいと思います。名詞としての「足蹴り」は文章の組み立て方を工夫して使わないように済ませるのが穏当でしょう。

(2019年12月20日)



質問に際して

「足蹴り」という言い回しを時々見かけます。毎日新聞用語集では「足蹴りにする」とある場合には「足蹴(あしげ)にする」と直すように案内していますが、それ以外でも「足蹴り」という言葉自体がなんだか不自然に感じられます。「手殴り」とは言わないわけですから……。

先日も、とある学校で教諭が生徒を「足蹴りした」という原稿を目にして「足で蹴った」と修正したのですが、これもくどい言い回しだったかとも思います。殴るのは手以外にも棒やら鈍器やらが考えられる一方、蹴るのは足以外にありません。膝蹴りも「足」に含まれますし。いずれにせよ先生が生徒を蹴ってはいけないとは思いますが。

しかし同じ日の別の紙面で、労政審議会が示したパワハラと考えられる行為の中に「殴打、足蹴りを行うこと」という項目がありました。うーん、殴ることを表す「殴打」は普通ですが、蹴ることは「足蹴り」しかないのでしょうか。「殴ること、蹴ること」と書いてくれればいいのに……。しかしこれは「足蹴り」という言い回しが浸透していることを示す証拠とも言えそうです。

大辞林など一部の国語辞典でも「足蹴り」は見出し語に挙げられているのですが、どの辞書にも載っている言葉とは言えません。しかし実際に「足蹴り」と原稿に書く記者もいるわけですから、こちらが考える以上に既に浸透した言葉なのでしょうか。ここで皆さんがどう感じるかを伺って、今後の参考にしたいと思います。

(2019年12月02日)

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