「日本晴れ」の読み方。「にほん」と「にっぽん」は国名でも決まっておらず迷う場面が多いのですが、「にほんばれ」が大差で優勢でした。そもそもなぜ快晴と「日本」が結びつくのか。江戸時代に「日本」は称賛の言葉として流行したそうです。

「日本晴れ」をどう読むか伺いました。

「にほんばれ」が大差で優位に

「日本晴れ」はどう読みますか?
にほんばれ 72.5%
にっぽんばれ 13.2%
どちらでもよい 14.3%

 

結果はご覧の通り「にほんばれ」が最多で7割超、「どちらでもよい」を含めると8割超を占めました。「にっぽんばれ」は「どちらでもよい」を含めても3割弱で、一般的には「にほんばれ」がよく使われていると言えそうです。

「どちらでもよい」とされるが…

この語の読みは辞書やNHKの資料を見ると「にほんばれ」「にっぽんばれ」どちらも言うとされています。ですから、テレビで「にっぽんばれ」と言ったり、椎名林檎さんが「NIPPON」という曲で「にっぽんばれ」と歌ったり(ツイッターでご指摘くださった方、ありがとうございます)したところで、「にっぽんばれ」の方が正しいということにはなりません。

ただし、どちらでもよいとはいうものの、発表した当事者が「にっぽんばれ」とした場合に「にほんばれ」にしていいかどうかはちょっと迷います。総ルビが原則の「毎日小学生新聞」では、サッカー日本代表の新ユニホームのテーマが「日本ばれ」とあり、読みは普通「にほん」だろうと校閲としては判断していたのですが、結果的に日本サッカー協会の発表通り「にっぽん」というルビで紙面化されました。今回の結果を受け、やはり一般的には「にほんばれ」の方が――と思いました。

国号の「日本」はどう読む?

今回の質問の根底には、国号としての「日本」をどう読むのがよいかという問題があります。政府は2009年6月30日の閣議で「日本」の読み方についての答弁書を決定しました。当時の民主党議員の質問主意書に答えたもので、「『にっぽん』または『にほん』という読み方は、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている」ということです。

日本銀行は「にっぽんぎんこう」

 

日本の国名そのものの読みが公式に決まっていないので、それを含む言葉に揺れが生じるのもやむを得ないことかもしれません。総ルビの毎日小学生新聞ではいちいち悩みます。

不ぞろいに見える場合も理由あり

大きな方針としては、一般的には「にほん」で、「東日本」などの地名や、一般語に準ずる「日本時間」「日本一」などはなるべく「にほん」にしています。これに対し日本という国名そのものを示すときは「にっぽん」、スポーツのナショナルチームとしての「日本代表」も「にっぽん」としています。この結果、先のラグビー・ワールドカップでは「にほんたいかい」「にっぽんだいひょう」と、一つの記事に異なるルビを付けるケースが多発しました。

毎日小学生新聞(2019年10月22日)より

 

しかし、不統一といえば不統一ですが、「岩波国語辞典」(第8版)によると、

謡曲「白楽天」で「にっぽん」と言う唐人白楽天に応じる住吉神(すみよしのかみ)は「にほん」と言う。この作から推せるとおり、対外的には「にっぽん」、国内的には「にほん」を称する傾向がある。

とのことです。同じ作品の中で「にほん」「にっぽん」を使い分けるということが歴史的にあるとすると、今の日本でも混在しているのはむしろ自然なことかもしれません。ワールドカップ大会の記事で、世界を相手にするチームとしては「にっぽん」代表、その大会の場所としては「にほん」というように使い分けるのも、それなりに意味のあることといえそうです。

なぜ「快晴=日本晴れ」か

ところで、そもそもなぜ快晴と「日本」が結びついたのでしょう。「日本語源広辞典」(増井金典著、ミネルヴァ書房)によると、「日本晴れ」の語源は「日本(最高、最上)+晴れ」ということです。

これだけではわかりにくいので、「江戸時代語辞典」(角川学芸出版)で「日本」そのものを引くと「物事を称賛する語で、江戸の通人の間に多く行われた。『こいつは日本だ』などと言う。『日本一』の略か」「用例によれば安永末年頃からの流行らしい」とありました。この称賛の言葉が「晴れ」と結びついて素晴らしい晴天の形容となったということはありそうです。

1964年の東京五輪の開会式は日本晴れでしたが、その時のサッカー日本代表のユニホームは上下とも白で結果は準々決勝敗退。その次の68年メキシコ大会で紺のパンツにして銅メダル。今のところこれが五輪での男子サッカー唯一のメダルです。さて2020年東京大会では、「日本晴れ」のユニホームを着た日本代表の“晴れ姿”を表彰台に見ることができるでしょうか。

(2019年12月13日)



質問に際して

11月6日にサッカー日本代表の新しいユニホームが披露されました。コンセプトは「日本晴れ」だそうです。毎日新聞本紙では読み仮名(ルビ)は付けませんでしたが、毎日小学生新聞は総ルビが基本ですので、「にほん」か「にっぽん」かの選択が迫られます。

毎日小学生新聞の方針を大ざっぱにいえば、一般的には「にほん」。「にっぽん」は国名そのものや国家を代表する機関、スポーツのナショナルチームなどに限って使っています。ですからチーム名としての「日本代表」は「にっぽんだいひょう」とルビを振っています。しかし「日本晴れ」に関しては「にほん」が一般的だろうと毎日小学生新聞の校閲として判断しました。

ところが当日、在京各テレビ局のニュースを見ると確認できた限りではすべて「にっぽん」と発音していました。おそらく日本サッカー協会の発表に合わせたのだと思われます。

ただ、固有名詞ではない「日本晴れ」は、発表時の言い方がどうであろうと一般的な読み方で伝えてよいのではないでしょうか。そこで「日本晴れ」は普通どう読まれているかうかがってみたくなりました。2020年に向けての参考にさせていただければと思います。

(2019年11月18日)

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