伝聞の「そう」止めは、違和感派と容認派が半々になりました。ネットでは辞書編集者らの容認意見が散見されます。しかし、誤読しそうなど違和感の表明も多く、一瞬でもそこで読者がつまずいてしまうとすれば、やはり避けるべきでしょう。

「一番人気だそう」など、人から聞いた伝聞の意味として「だ」のない「そう」で止める表現について伺いました。

「違和感派」と「容認派」が均衡

「人気だそう。」など伝聞の意味で止める表現。違和感ありますか?
違和感あり。「だそうだ」とすべきだ 48%
自分は使わないが変とは思わない 30.9%
違和感はないし、自分でも使う 21.1%

 

三つの選択肢の一つとしては「違和感あり。『だそうだ』とすべきだ」の回答が圧倒しています。しかし「自分は使わないが変とは思わない」「違和感はないし、自分でも使う」を容認派としてひとくくりにすると、違和感派とほぼ半々という結果になりました。

「70年代からある言い方」との意見も

出題時の解説では、昔はあまり見た記憶がないと書きましたが、これはあくまで個人的な記憶です。ツイッターでは「アンアン」(創刊1970年)、「ノンノ」(同71年)あたりの「軽情報系」雑誌の創刊時からあるとの指摘がありました。

毎日新聞の記事で確認すると、90年から「CM NOW」編集長、河村民子さんのコラム「うわさのCM」で多発していました。たとえば「そういう意図なんだそう。」という具合です。ほかにも軽めのコラムにぽつぽつと見られました。

ニュースでは1987年12月の「ゴルバチョフ書記長殿『プラトーン お返しを』」という記事に出ていました。映画「プラトーン」のビデオを持ち帰ったソ連のゴルバチョフ書記長に、配給権を巡り係争中だった配給会社が返還を呼びかける一方で、場合によっては別の新品を「『送ってさしあげることができる』のだそう。」と伝えています。ただし、この例だけでは「脱字」の可能性も否定できません。インタビューなどの記事の使用例は10年前くらいまではほとんどありませんでした。

毎日新聞1987年12月14日朝刊

使用は広がりつつあるが…

しかし最近では、ここ1カ月の毎日新聞だけでも「なお手を入れたそう。」(映画の紹介記事)、「1時間ほどだそう。」(ベテラン校閲記者へのインタビュー記事)などが目につきました。

なぜ「だ」というたった1文字を略すのでしょう。「そうだ」は伝聞の助動詞ですが、同じ「そうだ」でも伝聞とは別の意味の助動詞(「態様」というそうです)が、「負けそう」など「だ」を略すことが多いので、その用法が広がっているということはあるかもしれません。ネットでは国語学者や辞書編集者の意見として、「『だ』は着脱可能」(「~だそう。」で終わるの何だか気になる? 広まった理由を調べた)、「誤用とは思っていない」(「由緒ある神社だそう」の「そう」って何?)など、容認する意見が散見されます。

三省堂国語辞典7版

 

しかし思うに、同じ「そうだ」でも伝聞(「雨が降るそうだ」)と態様(「雨が降りそうだ」)の助動詞では用法も違うのではないでしょうか。伝聞の場合「雨が降る」だけでも文が成立するのに対し、態様の場合「そうだ」を取ると「雨が降り」で一つの文として完成しません。意味だけでなく使い方も違うのに、一方(雨が降りそう)が「だ」を省いてもよいからもう一方(雨が降るそう)もよしとするのは、どうも納得がいきません。

伝聞の「そう」止め、やはり避けたい

また、ツイッターの反応でも「人気だそう」だと「人気を出そうよ」という、伝聞とは別の意味に見えてしまうという意見も複数ありました。先の毎日新聞での例では「なお手を入れたそう」は「入れたそうにしている」、「1時間ほどだそう」は「1時間ほどだゾー」と誤読される可能性もあります。そういう誤解があったとしても一瞬のことで、文脈で分別は可能でしょう。でも一瞬でもそこで読者がつまずいてしまうというのは、文章の質を落としてしまうと思います。

放送会社でも議論になったことがあり、不十分な言葉と結論づけた社もあるとのことです(新・ことば事情6409「だそう2」)。今回のアンケートでは半々だったとはいえ、ツイッターでの反応はほとんどが違和感の表明でした。やはり伝聞の「そう」止めは避けるべきだと意を強くしました。

(2019年11月08日)



質問に際して

今回の出題者はしばらく前から、テレビの情報番組のナレーターなどが「一番人気のメニューなのだそう。」などと言うのを聞くたびに「どうして『……だそうです』と言わないんだ」といらついてチャンネルを変えてしまっていました。

「そうだ」というのは伝聞の助動詞で、終止形はもちろん「そうだ」。丁寧に言うと「そうです」。「そう」で止めると語幹だけで、文法的に不完全です。ただし、同じ「そうだ」でも、伝聞とは別の意味である「態様」の助動詞「そうだ」の場合は、「雨が降りそう」で止めても違和感がない人が多いのではないでしょうか。若干くだけた感じはあるのですが、書き言葉でもコラムなどではよく使われていそう(です)。

しかし、伝聞の意味の「そうだ」の「だ抜き」となると、昔はあまり見た記憶があり ませんでした。それがここしばらく、新聞の文章でも目につくようになりました。そし て若い校閲記者の書いた文章にも「だそう。」が登場しました。

国語辞典では、新しい用法や意味を積極的に採用する「三省堂国語辞典」が第7版(2014年)で「そう」を「『そうだ(助動詞)』の語幹」として立項し、「新作のロールケーキも人気だそう」という用例を載せています。もはやこの使い方は認知されているのでしょうか。皆さんの感じ方はいかがでしょう。

(2019年10月21日)

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