力を合わせて行動する「きょうどう」の表記。過半数が支持した「協働」は、時代背景を踏まえて定着したと捉えられます。使い分けが難しい「共働」も今後広まる可能性がありますが、現在は強い思いを込めて使われている場合が多そうです。

力を合わせて行動するという意味で「協働」「共働」という表記を使うか伺いました。

多数派は「協働」だが「共働」も3割超す

みんなで力を合わせて行動する「きょうどう」。漢字ならどう書きますか?
協働 52.5%
共働 17.4%
「協働」でも「共働」でもよい 16.3%
「協働」も「共働」も使わない 13.8%

 

どちらでもよいという人を含めれば、「協働」は3分の2、「共働」は3分の1の支持を得ました。「協働」はかなり浸透し、「共働」も思ったより受け入れられています。

「力を合わせる」なら「協働」

日本国語大辞典2版を見ると1931年の「いろは引現代語大辞典」に「協働」が載っているとのこと。しかし頻繁に見るようになったのはそれほど昔ではありません。

新語・新用法を積極的に取り入れる三省堂国語辞典が「協働」を採用したのは2008年の6版です。その際に編集者の飯間浩明さんが共同・協同・協働の違いについてコラム(共同・協同・協働。その違いは?)を書き、「共同」の語釈を見直したことを記しています。

「共同浴場」「共同受信アンテナ」のように、「共同」には「力を合わせる」という要素が必ずしもあるわけではないので、「ふたり以上の人が力をあわせてすること」という説明から「ふたり以上の人がいっしょに・する(使う)こと」(7版でもほぼ同じ)に変更したのです。このように考えるなら、力を合わせるとは限らない「共同」ではなく、限定的な場面で使われることが多い「協同」でもなく、あえて「協働」を選ぶ意味はあるでしょう。

97年には当時の文部省の有識者会議が「新しい産学協働の構築を目指して」という表題の報告を出しました。一般的な「産学協同」を使わず、大学が産業界に積極的に働きかける意義を強調しています。また東京都北区の委員会による「協働型行政への提言」(04年)は「市民活動団体と行政が共通の地域課題の解決に向け、互いの特性を生かし、対等の立場で、ともに考え、ともに取り組むことが求められます。ここに、『協働』を考え、『協働』を進める大きな意義があります」と述べています。

ここ数十年、公と民の連携が必要な場面は増えています。そこで多く使われた「協働」は、時代背景を踏まえて定着した言葉と捉えてよいでしょう。

あえて「共働」が使われる場合も

では「共働」はどうか。三国は7版で「協働」の項に「共働」の表記も加えました。広辞苑は、6版では生物における相互関係を意味する学術用語としてのみ説明されていましたが、7版で新たに「ともにはたらくこと」という意味が追加されました(そして生物学の「共働」は「旧称」となりました)。

三省堂国語辞典7版

 

学術用語でない「共働」も今後広まる可能性がありますが、そうすると悩ましいのは「協働」との使い分け。条例などの表記で「協働」「共働」どちらがよいかと議論になった自治体もあります。

福岡市は民間との連携について、NPOや市民と対等な立場でともに事業を進めるという意味で『共働』と表記しています。

福岡市の「共働事業提案制度」

 

愛知県豊田市は「市民と行政が、共通する目的に対して、それぞれの判断に基づいて、それぞれ活動することも含んで、“共に働き、共に行動する”ことでよりよいまちを目指す」理念に基づき「共働」の表記を採用しています。

愛知県豊田市のサイトから

 

NPO法人共同連は「共働事業所」の設置を進めてきました。それは「職員は障害者の世話をする、面倒を見る、障害者が働くことを応援する」という「共同作業所」とは異なります。「場所を共に働く、共にものごとを決める、そして共に配分をする」という関係を目指し、それを「共働」と呼んでいます(「日本発 共生・共働の社会的企業」現代書館)。

「協働」は浸透、「共働」は限定的

こうしてみると、公と民、障害者と健常者といった立場の違いを踏まえ、それぞれが尊重され対等な関係で働くという理念を表すために、一般化した「協働」ではなく「共働」が選ばれていることが多そうです。強い思いを込めた特別な表記の性格が強く、単に一緒に働く、協力するというだけで「共働」と書くのは違和感を与えることもあるでしょう。今回のアンケートでは3割超が「共働」表記を認めましたが、数字としては微妙なところ。今後日常的に使われる言葉として浸透するかは見極める必要がありそうです。

(2019年11月05日)



質問に際して

毎日新聞用語集では「きょうどう」の項目で、「協同」は協同一致、協同組合などの場合に限り、基本的に「共同」を使うと定めています。「協働」「共働」への言及はありません。

他紙の用語集では「協働」の項目を立てているものもあります。「協力して働く」(朝日)、「力を合わせて活動する」(読売)という具合です。「共働」は新聞・通信社の用語集には見当たりません。

辞書での扱いは割れています。日本国語大辞典2版など「協働」のみ掲載している辞書が多数派。三省堂国語辞典7版は「協働・共働」とまとめており、広辞苑7版は別項目としてともに掲載しています。

岩波国語辞典7新版など、どちらも載せていない辞書もあります。同辞書では「共同」は「二人以上でいっしょに行うこと」、「協同」は「心をあわせ、力をあわせ、助けあって仕事をすること」。「協働」「共働」を使わずとも「共同」「協同」でよいのかもしれません。

用語集に記載がないということは、毎日新聞では「協働」「共働」を使っても構わないということなのですが、特に珍しい「共働」の表記には悩んでおり、支持率に注目しています。

(2019年10月17日)

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