レジでもらったりするあの袋の呼び方。「ビニール袋」が「ポリ袋」より優勢でした。実際は多くの場合「ビニール」ではありませんが、日常語として通用しています。ただ新聞としては混同を広める書き方は好ましくないでしょう。

レジでもらったりするあの袋の呼び方について伺いました。

「ビニール」が優勢だが「ポリ」も6割が使う

水を通さない、透明ないし半透明のごく薄い袋。なんと言いますか?
ビニール袋 40.3%
ポリ袋 22.2%
どちらも使う 37.5%

 

「ビニール袋」と呼ぶ人が「ポリ袋」の倍近い数字になりましたが、「どちらも使う」を含めて考えると「ビニール袋」が8割、「ポリ袋」が6割。ビニール袋が優勢ながら、どちらも広く使われていると言ってよさそうです。

日常語として使われる「ビニール袋」

回答から見られる解説では、毎日新聞の用語集に、今般新しく「ビニール袋とポリ袋」という項目ができたことを紹介しました。改めて他社の用語集を見てみると、多くのものが同様の項目を載せています。「レジ袋やゴミ袋などはポリエチレンやポリプロピレン製で、略称はポリ袋。『ビニール袋』とはしない」「ビニールは外見は似ているが全く別のもので、壁紙やテーブルクロスなどに使われる」などの説明が見られます。

毎日新聞の「耐水性のある袋全般を『ビニール袋』と呼ぶのは日常語として問題ないが、厳密にはごみ袋やレジ袋などのほとんどがポリエチレン製などの『ポリ袋』であることに留意する」という書き方はややマイルドです。ただし、記者に向けての言葉として読むと、取材相手が「ビニール袋」と言っているとしてもそれは「日常語」なのであって、その通り「ビニール袋」と書いてもよいかどうかは分からないぞ、と言っているように見えます。

ビニールとポリ、どう違う?

さてしかし、ビニール袋とポリ袋が「違う」と言われても何のことやらという人もあるかもしれません。正直に言うと、出題者もその一人です。この解説を書くためいろいろ説明を読むのですが、どうも心もとない。とりあえず分かったのは、ビニールは素材に塩素を含んでおり、ポリエチレンなどは含まないということぐらいでしょうか。

ビニール側の日本ビニル工業会によると、私たちが普段ビニールと言っているのは「塩化ビニル樹脂」また「ポリ塩化ビニル」のこと。「柔らかいフィルム、シート、電線被覆材、ホース、チューブ、自動車内外装部材などから硬い配管、平板、波板、雨樋(あまどい)まで様々の製品に加工され、使用されています」(日本ビニル工業会のウェブサイト「ポリ塩化ビニルに関するQ&A」から)。言われてみれば水道管なども塩ビです。農業用ビニールハウスに使うようなシートもポリ塩化ビニルのものが多いようです。

一方のポリ袋側。日本ポリオレフィンフィルム工業組合のウェブサイトでは「日常生活で見かけるプラスチックフィルム製の袋、たとえば食品を包装している袋や買い物袋などはポリ袋です」と言います(同工業組合ウェブサイト「ポリオレフィンフィルムQ&A」から)。「ただし、日本では塩化ビニル樹脂の方が歴史が古いため、ビニール袋という名称が一般化したようです」とも。言葉としては、古くから存在して社会に浸透したものが使われているということになるのでしょう。

言葉としての歴史の差

確かに青空文庫を見ると「ビニール袋」ないし「ビニールの袋」は1960年代初頭の例が見られますが、「ポリ袋」「ポリエチレンの袋」といったものは見られません。谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」(1961~62年)には「ポリエチレン被膜」が出てきますから、素材として存在はしていたのだろうと察せられますが、日常語になってはいなかったようです。

神戸大学付属図書館の「新聞記事文庫」で検索すると、工業品としての「ビニル」ないし「ビニール」は1930年代から見られますが「ポリエチレン」等は見られず。後発の素材であるポリエチレンは、利用は広がったものの、言葉としてはビニールに一歩を譲ったまま現在に至ったものと見られます。

毎日新聞用語集より

 

新聞としてはやはり、各社の用語集も示しているように、「ビニール袋」と「ポリ袋」の混同を広めるような書き方は好ましくないでしょう。大抵の場合は「ごみ袋」「レジ袋」などと書き換えて済ませることもできます。原稿の中で「ビニール袋」を見かけたら、それをそのまま世に出してよいのかどうか、少し立ち止まって考えるべきでしょう。

「ナイロン袋」とは?

ところで、校閲グループのツイッターへのコメントで、主に関西方面の方から「ナイロン袋」だろう、というご意見をいただきました。東北出身の出題者としては初めて目にする言葉です。関西では普通なのか、と思い関西出身、または住んでいた部員5人ほどに聞いて回りましたが、使うという人はゼロでした。「紙や布ではない、ツルツルした感じの袋」について年配の人が言うかも、という声が聞かれた程度です。

やっぱりナイロン袋とか言わないよね、と思いきや、毎日新聞の過去記事をデータベースで検索すると地域面を中心に結構な数が出てくることが判明。ナイロンって布だろう、と思うのですが「透明のナイロン袋」のような記述を見ると、ポリ袋を指していると思われます。これは「ビニール袋」よりよほど直さなければならないように思うのですが、地域性として許される言い回しなのでしょうか……。

(2019年10月11日)



質問に際して

2019年版の毎日新聞用語集では「紛らわしいことば」という欄が新たに追加されました。その中の「ビニール袋とポリ袋」という項目には次のような説明があります。

「耐水性のある袋全般を『ビニール袋』と呼ぶのは日常語として問題ないが、厳密にはごみ袋やレジ袋などのほとんどがポリエチレン製などの『ポリ袋』であることに留意する。科学的に正しい書き方が必要な場合は、ビニール(ポリ塩化ビニールなどのビニール樹脂)製でないものは『ポリ袋』『レジ袋』『透明な袋』『袋』などとするのが望ましい」

要するに、コンビニでくれる袋やごみ袋の類いは「ポリ袋」だということです。「ビニール袋」はもっと厚手の、例えばプールバッグのようなものが該当します。もっとも、レジ袋などには以前から「ビニール袋」という呼び方が使われており、日常語として「ビニール袋」を使うことは支障ないとも考えられます。

記事に出てくる「ビニール袋」はたいがい「ポリ袋」なので、基本的に直そうとしていたこともありました。しかし、実態として「ポリ袋」と「ビニール袋」が区別なく使われているなら、「ビニール袋」のままでも読者にとって不都合はないのかもしれません。正確を期するか習慣を重んじるかで迷うことも多いのですが、皆さんはこうした袋をどう呼んでいるでしょうか。

(2019年09月23日)

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