「サボりたい」という表記が大多数でした。外来語としての意識が薄れているという認識からか「さぼる」も許容するものはありますが、辞書も「サボる」を原則としており、こちらが順当でしょう。名詞の場合は「サボリ」もあり得ます。

「サボる」という言葉の表記について伺いました。

「サボり」が大多数占める

やる気の出ない日。つい仕事を「○○○」たくなることも……。さて、どう書きますか?
さぼり 11.4%
サボり 82.2%
サボリ 2.3%
いずれも使う 4.1%

 

「サボり」が8割超と大多数を占めました。毎日新聞用語集が「サボる」という表記を載せているのも、実態に即したものと言えそうです。

ダブる、ツモる、ダフる、ディスる…

回答から見られる解説でも書きましたが、「サボる」はフランス語の「サボタージュ」を略した「サボ」に活用語尾を付けて、日本語として動詞化した言葉です。似たような言葉としては英語の「ダブル」に由来する「ダブる」(二重になる、留年する)が「サボる」と双璧をなすのではないでしょうか。「ずる休みする」よりは「サボる」が言いやすく、「二重になる」よりは「ダブる」が使いやすい。こうした感覚は既に私たちに染みついていると思います。

by yui*

 

他にもマージャンをする人なら「ツモる」と言うでしょうし、ゴルフをする人なら「ダフる」も使うことでしょう。主にウェブサイトなどで見かける「ディスる」は、先ごろ出版された大辞林4版では見出し語に挙げられました。説明は「〔ディスは、disrespect(敬意を欠く、軽蔑するなどの意)の短縮形dis, dissからの俗語〕見下げる。けなす。罵倒する」というもの。いずれも活用語尾「る」の部分は平仮名で書くのが普通です。「る」まで片仮名で書いてしまうと動詞に見えないということなのでしょう。

平仮名表記を許容する辞書も

国語辞典を見ると、「サボる」を原則の表記とする一方で、平仮名の「さぼる」を許容するものもあります。三省堂国語辞典(7版)は「サボる」の項目で「『さぼる』とも書く」としており、三省堂現代新国語辞典(6版)にも同様の記述があります。もはや外来語としての意識が薄れているという認識からでしょうか。確かに「サボる」は日本語に揺るぎなく定着しそうで、ポルトガル語に由来する「かっぱ」「かるた」「たばこ」などのように、いずれは語源が意識されなくなると見ているのかもしれません。

三省堂国語辞典7版

名詞の場合には「サボリ」も

文化庁の「国語に関する問答集10」(1984年)には「『サボる』か『サボル』か」という項目があります。外来語を動詞化するなら、「ドライブする」などのように「―する」という動詞化語尾を付けてサ変動詞にするのが普通といい、形容詞なら「スマートな」のように語尾「な」を付加するといいます。そして「これらの例と見合わせて考えれば、日本語流の活用語尾を付加したものとして『サボル』よりも『サボる』のほうが自然な表記ということになる」としています。

一方で、「ただし、右の動詞の連用形が名詞化して用いられた場合に限っては、事情が異なってくる」とも言います。「サボりぐせがつく――サボリぐせがつく/つまり、動詞の意識が強く残っている場合は、上段〔左〕のような表記をするだろうが、名詞化の意識が強ければ、下段〔右〕の表記をとることになって、そこに表記の“ゆれ”が生じる」とも。名詞として使われることが多い「サボリ」や「ダブリ」に限られるということですが、活用語尾の部分も片仮名になるケースはあり得るということです。

記事は平仮名書きも多いが、「サボり」が順当

毎日新聞の記事データベースを見てみると1989~2018年の30年間(東京本社版、地域面除く)で▽「さぼり」88件▽「サボり」99件▽「サボリ」46件。平仮名が多いのは、この言葉の日常への定着ぶりを示すものと言えるでしょう。また、毎日新聞用語集には「読みやすさのために、平仮名の用例を片仮名で、片仮名の用例を平仮名で書くのは差し支えない」というルールもあるため、「さぼり」で特段に不都合が無いならそのまま直さないということもあるはずです。

とはいえ、辞書を見ても、アンケートの結果からしても、「サボる」が普通の書き方であるのは間違いありません。「今日はサボる」などと堂々と書くことはあまりなかろうとは思いますが、SNSなどにひっそりつぶやく時にも、あるいは「あいつまたサボりか」などと愚痴をこぼす時であっても、「サボり」「サボる」と書くのが順当でしょう。

(2019年09月27日)



質問に際して

恥ずかしながら、最近になって初めて、毎日新聞用語集に「さぼる」という項目があることに気が付きました。校閲の仕事に就いて20年あまりになるのですが……。

もっとも項目は「さぼる サボる」とあるだけ。「さぼる」という言葉は「サボる」と表記しましょう、ということです。元々は争議行為として意識的に仕事の能率を落とす意味のフランス語「サボタージュ」。それを日本語に取り入れ動詞化したものが「サボる」ですが、一般的には怠けること、怠けて休むこととして使われます。

「サボ」の部分は外来語なので片仮名、日本で付け加えた活用語尾「る」は平仮名書き、というのは出題者としては当たり前に感じてしまうところで、だからこそ用語集に載っていることにも気付かなかった――というのは言い訳ですが、最近仕事で「さぼる」と書く原稿を見かけて考えが揺らぎました。当たり前というのは心得ちがいかも。日本語としての定着が進んで、外来語から生まれた言葉との意識が薄れているかもしれません。

名詞でも使う「サボり」の場合は「サボリ」と「り」を片仮名で書く形も使われそう。皆さんがどう書くか、ぜひ伺いたいところです。

(2019年09月09日)

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