和製英語の「ファンタジック」を見出し語として載せている国語辞典は少なくありません。ただ現時点では「おかしい」と感じる人が4割強と、使用をお勧めできる言葉とも言いかねます。「ファンタジー的」「幻想的」とするのもよいでしょう。

「ファンタジック」という言葉について伺いました。

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「おかしい」は半数に届かず

「ファンタジー的」といった意味で使われる「ファンタジック」。どう感じますか?
問題ない 21.3%
違和感はあるが、許容できる 35.4%
おかしい。「幻想的」などとしたい 43.3%

 

「おかしい」と感じる人が最多でしたが4割強。「問題ない」と「許容できる」を合わせれば過半数を占めており、英語ではないカタカナ語としての「ファンタジック」が一定程度受け入れられていることを示しています。

国語辞典は見出し語に採用

回答から見られる解説では、主に英語の辞典の側から「fantasic」という英語が存在しないことを説明しましたが、国語辞典の側から見るとまた違う話になります。辞書で引いてみると見出し語として載せているものが少なくありません。

「〔和 fantasy+ic〕ファンタスティック」(大辞林4版)、「《和 fantasy+ic》『ファンタスティック②』に同じ。『―なアニメ』」(大辞泉2版)、「〔『ファンタジー』と『ファンタスティック』が混じった言い方〕ファンタスティック」(三省堂国語辞典7版)――など、英語での「ファンタジー」の形容詞「fantastic」と同じ意味を日本独自の表記にしたものと考えられています。

ちなみに「ファンタスティック」の説明は「①非常にすばらしいさま。感動的『―な光景』②幻想的で、夢を見ているようなさま。『―な舞台効果』」(大辞泉2版)というもの。大辞泉はこのうち②の「幻想的」という意味に限って「ファンタジック」が使われるとしています。

用法には目立った特徴なし

ただし、同じ意味というのであれば、英語に忠実な形で「ファンタスティック」とするのもよいでしょうし、あるいは英語の「すばらしい」というニュアンスを避けて「幻想的」「ファンタジー的」とするのがよいのではないかとも思います。それでもあえて「ファンタジック」が使われるという点について、意味上の問題はないのかが気になります。

毎日新聞の記事データベースで過去記事(東京本紙、地域面除く)を検索すると、1987年から今年8月に至るまで126件の記事がヒットしますが、意味として明確な意図は見いだすことができませんでした。「身分違いの恋を、ファンタジックなおとぎ話にせず……」「ファンタジックな異世界をイラストで表現し……」「この映画はファンタジックなラブストーリーだ」などなど。やはり「ファンタジー調の」などとすれば良さそうなところをあえて「ファンタジック」と書くのは、和製英語として定着したという認識からでしょうか。

狭義の「ファンタジー」作品との相関も見られず

一方で「ファンタジー」という言葉が限定的な形で使われることも増えているようです。「ゲド戦記」などの作品で知られるアーシュラ・K・ル・グウィン氏は「ファンタジーについて広く前提とされているいくつかのことが、わたしをいらいらさせます」と言いながら、現代の「ファンタジー」作品の特徴について「(一)登場人物たちは白人で、(二)中世っぽい時代に生き、(三)善と悪の戦いを戦っている」(「いまファンタジーにできること」河出書房新社)としています。

こうした一種の「お約束」にのっとった作品はもはや「幻想的」でもなく「ファンタスティック」でもなく、何か別の言葉を用意しなければならないのではないか。そして「ファンタジック」は案外そこにはまる言葉なのかもしれない――と考えたのですが、それは出題者の思い込みだったようです。実際の「ファンタジック」は特に意図もなく使われています。

アンケートの結果からみると、もはや必ずしも拒否反応を示すべき言葉ではないのかもしれません。和製英語だからといって「ナイター」や「ガソリンスタンド」を拒否する人もほとんどいないわけですし。ただし、現時点ではまだ「おかしい」と感じる人が4割以上いることを考えると、使用をお勧めできる言葉とも言いかねます。口頭語であれば「ファンタジーっぽい」ぐらいで済ませることもできますし、あえて「ファンタジック」を使う理由は無いのではないかと考えます。

(2019年09月10日)

質問に際して

この「毎日ことば」のサイト内に、「ファンタジック」は「幻想的」などに置き換えては?と提案する写真と記事がありますが、最近それを見てちょっと微妙な気分になりました。写真の書き込みをしたのは出題者自身なのですが……。

「ファンタジック」をアルファベットでつづれば「fantasic」でしょうか。しかし、この語は英語の辞書にはありません。最も網羅的な英語辞書、Oxford English Dictionary(2版、1989年)にも載っておらず、見た限りでは英和辞典にも記載はありません。

英語など語学に関するサービスを提供する「アルク」のサイトで見られる、英和対訳データの集積「英辞郎 on the web」(データ提供:EDP)には見出し語「fantasic」が存在します。「和製英語」として「ファンタジックな、ファンタジー系の」と説明し、注記して「もともとはfantasticの誤用と思われるが、(主に映画、ゲーム、小説の舞台設定などが)幻想的な、ファンタジー的なというニュアンスで普通に用いられることがある」とも。

出題者も、書き込みをした時は「ファンタスティック」とすべきものが誤って使われているのか、と考えていたのですが、それから数年がたち、ファンタジー系のテンプレート的な設定を用いた漫画やゲームなどには「ファンタジック」を使わざるをえないのではないか、という考えに傾きつつあります。いかがでしょうか。

(2019年08月22日)

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