「お前」という呼び方は「親しみが感じられなければ不愉快」という人が約半数で最多でした。相手に不快感を与えるリスクがあることも確かですが、お互いの距離の近さや会話の雰囲気が重要なファクターであるようです。

「お前」という呼び方について伺いました。

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許容できる場合もある人が6割超

「お前」と呼ばれたらどう感じますか?
不愉快 30.9%
親しみを感じられない場合は不愉快 49%
目下の相手から言われたら不愉快 14%
気にならない 6.1%

 

3割の方が無条件に「不愉快」とし、「気にならない」方は1割に満たず。また「目下から言われたら不愉快」(つまり目上や同輩からなら構わない)という方は1割程度でしたが、「親しみが感じられなければ不愉快」(つまり親しみがこもっていれば構わない)という方は約半数で最多でした。上下関係といった立場よりは、お互いの距離の近さや会話の雰囲気が重要なファクターであるようです。

元々は敬意のこもった言葉だが…

このほど、中日ドラゴンズの応援歌のフレーズ「お前が打たなきゃ誰が打つ」について、選手を「お前」と呼ぶのは避けてほしいと球団が応援団に要請したことが話題になりました。これについてネット上では「『お前』は元々敬意の含まれていた言葉だからよい」という意見もありました。

確かに日本国語大辞典2版によると、「江戸前期までは、敬意の強い語として上位者に対して用いられたが、明和・安永(1764~81)頃には上位もしくは対等者に、さらに文化・文政(1804~30)頃になると、同等もしくは下位者に対して用いられるようになり今日に至った」とあります。

同じような変遷をたどった言葉に「貴様」があります。元々は「かなりの敬意をもって使われた語」ですが、「やがて庶民の話言葉として使用されるようになってから敬意を失」い、「江戸時代の末にはぞんざいな語、ののしりの語として用いた」そうです(堀井令以知編「日常語の意味変化辞典」東京堂出版)。そしてご存じの通り「今日では男性が同輩以下に親しみを持って用いるか、あるいは軽蔑して相手を呼ぶときに用い、上品とは言いにくい語に意味を変え」ました(同)。

現在、仲間内でふざけるのでもなければ、「貴様」呼ばわりが問題になるだろうことは共通認識だと思います。「お前」についても、同等または目下に使うようになってから相当の歴史があり、元々の意味を根拠に「『お前』を使うことに問題はない」とするのは無理があるでしょう。アンケートの結果から見ても、相手に不快感を与えるリスクが高いことは確実で、球団側の要請は分からなくもありません。

相手との距離を詰める場合も

しかし応援歌なんてものはどうしても、勝手な思いがこめられるものです。「お!ま!え!が!きめろ!」(広島カープ)、「お前のバットで決めてやれ!」(DeNAベイスターズ)など、「お前」と呼びかけるのは珍しくありません。さらに「打て」だの「走れ」だの命令形を連発します。

これは別に選手を下に見ているわけではありません。中日の他の応援歌に「我らと共に歓喜への道 進め勝ち取るんだ」「いざゆけ我らのドラゴンズ」とあるように、親しみを込めるどころか選手と一体となる気持ちで呼びかけているはず。この気持ちを否定するのもまた難しいことです。

中日の与田監督は応援歌の「お前」について、「子供の教育上よくない」という見解も示しました。確かに子供に「お前呼ばわりはよろしくない」と教えるのは重要です。一方でアンケートの結果からも分かるように、親しみをこめて「お前」と呼ぶことは十分にあり得るし是認されます。そのような仲の友人を作ることで人生が楽しくもなるでしょう。

応援歌からも締め出すような言葉かどうか…

逆にそれほど親しみを感じない相手から一方的に「お前」と呼ばれることもあるものです。昨年には吉本興業の新入社員が「お前」と呼ばれたことを理由に退社した、というニュースが話題になりました。もしその呼び方が高圧的なものだったなら、嫌な気分になるのは当たり前です。しかしまた「お前」という言葉自体がそんなに重みを持ってしまうなら、いささか妙な感じがします。「相手はこちらに対して距離を縮めようとしているのかも」などと思える程度に慣れておくと言いますか、使い方に幅のある言葉であることを知る機会も必要ではないでしょうか。

「お前」と呼んで相手がどう感じるか想像することは大切ですが、一律に「お前」を排除する、という方向に行くとすれば少しおかしなことだと思います。

(2019年07月26日)

質問に際して

プロ野球・中日ドラゴンズの応援歌のフレーズ「お前が打たなきゃ誰が打つ」について、選手を「お前」と呼ぶのは避けてほしいと球団が応援団に要請。応援団はこの応援歌の使用を自粛することになり、議論が起こっています。

三省堂国語辞典7版によると「お前」は「もとは、同等以上の相手に対する表現」でしたが現在では「同等、または目下の相手を指す語で、二人称のぞんざいな言い方」。そして「男性が近い関係にある相手に用いる場合は、親しみの気持がこめられる」とのこと。

すると問題点は二つ。呼びかける相手を「同等以下」と見ていること。もう一つは「ぞんざい」であること。呼ばれた方が気分を害する可能性はありそうです。ただしその一方で「親しみ」も込められているわけですから、一概に使用を否定はできません。呼ぶ相手との関係が問題になりそうです。

応援歌問題では「お前呼ばわりは失礼」よりも「なぜだめなのか分からない」という意見をネット上で多く見ましたが、アンケートではどういう傾向が出るでしょうか。

(2019年07月06日)

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