粉じゃなくても「歯磨き粉」と呼ぶ人が7割でした。メーカー側はこの言い方を使っていないようですが、「げた箱」「筆入れ」同様、物が名称と呼応していなくても使われ続けている、問題ない言い回しと言えそうです。

歯を磨く時に使うペースト状のものについて伺いました。

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7割が「歯磨き粉」を使用

歯磨きの時に歯ブラシに付けるチューブ入りの物体を何と呼びますか?
歯磨き粉 69.5%
練り歯磨き 10.1%
歯磨きペースト 7.1%
歯磨き 13.3%

 

「歯磨き粉」が7割に迫り、他の選択肢はみな1割前後と大差を付けられました。あのチューブ入りの物体は、今なお「歯磨き粉」と呼ぶことで決まり、と言ってもよさそうです。

辞書の項目は「歯磨き」

国語辞典を見ると、ほとんどの辞書に「歯磨き粉」の項目はありません。歯磨き剤について述べているのは「歯磨き」の項目。「①歯を磨くこと。②『歯磨き①』に使うクリーム・粉。歯磨き粉(こ)。練り歯磨き」(三省堂国語辞典7版)ぐらいが標準的な記述でしょうか。「歯磨き粉」「練り歯磨き」という呼称はあれど、とりあえず「歯磨き」だけで歯磨き剤のことを意味する、としています。

「歯磨き粉」で項目を立てているのは日本国語大辞典。1972~76年の初版は「歯をみがくとき歯ブラシにつけて用いる粉」としていましたが、2000~02年の2版ではそれに加えて「練状のものについてもいう」と、説明が補強されました。呼称は「粉」でも粉末以外にも使われるという実態を反映してのことでしょう。

名前だけが残るものの一つ

メーカー側はどのような呼び方をしているでしょうか。ホームページから製品情報を見てみると、製品が市場シェアで上位を占めるサンスター、ライオン、花王はいずれも「ハミガキ」。日本歯磨工業会では「歯磨剤」を使用しています。製品の性質を分かりやすく伝える必要があるメーカー側としては、粉でないものに「粉」を付けるわけにはいかないのでしょう。

ツイッターでは「げた箱や筆入れと同様」で、使われ続けている言い回しは物が名称と呼応していなくても割り切って使う、という意見もいただきました。確かに「げた」は無くなっても「げた箱」は残っており、「筆」を入れることはなくても「筆入れ」といいます。「粉」でなくても「歯磨き粉」というのも、あまり気にする必要はないのかもしれません。

「歯磨き粉」でOK、気になるなら「歯磨き」で

今の若い人は歯磨きが粉だった時代を知らないから、練り歯磨きにも「歯磨き粉」を使う――という指摘は実際にいただいたことがあるのですが、アンケートの結果を踏まえても「歯磨き粉」という呼称を用いることは問題なさそうです。どうしても気になる向きには、辞書類の支持を得ている「歯磨き」か、業界で用いる「歯磨き剤」とするのがよいでしょうか。

(2019年05月24日)

質問に際して

「子どもが歯磨き粉に対するアレルギー反応で死亡」という海外発のネットニュースを目にし、痛ましいと思うと同時に職業的な興味を抱きました。やっぱりこういう時も「歯磨き粉」と言うのだなあ、と。記事には、歯ブラシにチューブから歯磨き剤をしぼり出したイメージが添えられていました。粉ではありません。

かつて歯磨き剤は粉末でした。しかし、ライオンが出していた缶入りの粉歯磨き「タバコライオン」は2016年に製造終了。粉末の「スモカ歯磨」が現在でも販売されていますが、「粉」の歯磨き剤を目にすることはまず無いのではないでしょうか。

日本国語大辞典(2版)の「歯磨粉」の項目は「歯をみがくとき歯ブラシにつけて用いる粉。練状のものについてもいう」としており、「粉」でなくともよいという見解。チューブ入りが主流になっても、呼称はそのまま使われている現状を反映したものと言えそうです。もっとも国語辞典で「歯磨き粉」を項目に立てているものは少なく、多数意見と言えるかどうかは分かりません。

新聞でも「歯磨き粉」と書くことは多く、呼称自体は有力だろうと思います。しかし「粉じゃない!」というご意見をいただくこともあり、皆さんが何を選ぶか興味のあるところです。

(2019年05月06日)

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