選挙から「●カ月ぶり」に新政権発足、という表現は違和感を持つ人が過半数でした。「ぶり」は「再び同じ状態が現れるまでに、それだけの時間が経過した意を表す」(大辞泉2版)。「同じ状態」を読み取りにくい表現は避けた方が無難です。

時間の経過を示す「ぶり」について伺いました。

スポンサーリンク

違和感を持つ人が過半数

選挙から「●カ月ぶり」に新政権発足。この「ぶり」、どうですか?
新しいものの発足に使うのはおかしい 57.8%
「政権」は以前もあったはずで、おかしくない 42.3%

 

「おかしい」という回答が6割弱ですが、「おかしくない」と考える人も4割超ということで、はっきりした差が付いたとまでは言えません。それでも、違和感を持つ人が多いということには留意が必要でしょう。

「同じ状態」までの時間を表す

改めて辞書の説明を見てみると「時間を表す語に付いて、再び同じ状態が現れるまでに、それだけの時間が経過した意を表す」(大辞泉2版)。「同じ状態」が現れるというのが要点だとすると、たとえば「1カ月ぶりに勝利」というなら前回の勝利は1カ月前、「10年ぶりに再会」というなら前回会ったのは10年前、となります。

その伝でいくと、「●カ月ぶりに新政権発足」というならば、前回の新政権発足が●カ月前、ということででなければなりません。とすれば質問で挙げた使い方は「おかしい」ということになります。

読み手が理解できればOKの場合も

しかし一方で、「事件から七〇時間ぶりに解放」のような用例を挙げている辞書もあります(明鏡国語辞典2版)。これを読んで、70時間前にも「解放」されたの?と思う人はまずありません。何者かにとらわれた状態から、自由な状態に戻ったのが70時間ぶりということです。「同じ状態」を読み取るに当たっても、明示的に書かれた出来事だけにこだわる必要はないと言えそうです。

「選挙から●カ月ぶりに新政権が発足した」という文は、選挙によって前の政権が正統性を失った状態から、通常の政権が存在する状態に戻ったという意味で「ぶり」が使われていると考えることもできます。ただそれでも、政権に「新」が付いているのは納まりが良くありません。一考の余地がある表現と言うべきでしょう。なお、回答からの解説で引いた「着工以来、半世紀ぶりに全線開通」のような表現は「同じ状態」を読み取ることができないので、避けた方が無難です。

ダメとは言い切れないが、直したい

アンケートの結果から見ても、辞書の内容などを検討した上からいっても、今回はグレーゾーンに当たるケースだったのではないかと思います。ただし個人的な思いを述べれば、余計な違和感を持たずに読める記事を発信するという観点からは、今回の例のような言い回しは直したいところです。「選挙から●カ月を経て新政権発足」とすれば問題なかったのではないか、と考えます。

(2019年02月12日)



質問に際して

まずは国語辞典の「ぶり」の項目から。「前回と今回との間にそれだけの時間が経過した意を表わす」(現代国語例解辞典5版)。時を置いて同じ出来事が繰り返されるとき、その間の時の経過を表すのが「ぶり」だということです。「新政権発足」は新しい出来事であり、「選挙」とも呼応しておらず、繰り返しという要素が欠けているように思えます。

「『着工以来七年―に完成』のような言い方が現れたが、七年まえには完成していなかったがゆえ、誤用」(岩波国語辞典7新版)のように、前には起こっていなかった出来事についていうのは「誤用」だと言い切る辞書もあります。毎日新聞でも、過去記事を見ると「着工以来、半世紀ぶりに全線開通」のようなものが出てきますが、辞書にられてしまいそうです。

ただし、今回伺ったようなケースでは、「政権」は以前にもあったはずだからおかしくない、と考える向きもありそうです。「選挙」はそれまで前の政権があったことを示しており、「新政権発足」も繰り返しと考えて差し支えないという見方です。ただそれならば、「●カ月ぶりに政権が成立した」のようにすればよいだろうか、とも思います。

出題者には何となく居心地の悪さを感じる表現なのですが、違和感が一般的なものといえるかどうか。皆さんの回答に教えていただきたいところです。

(2019年01月24日)

フォローすると最新情報が届きます

Twitter