課題は「さんせき」か「やまづみ」か。前者が比較的多数でした。荷物は「山積み」で問題は「山積」という使い分けが新聞協会や毎日新聞の用語集にありますが根拠は分かりません。ただ「やまづみ」の方が新しいようです。

「やまづみ」と「さんせき」について伺いました。

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4分割も「さんせき」が比較的多数

課題がどっさり。何と言いますか?
課題が山積(さんせき)する 33%
課題が山積みになる 21.9%
どちらでもよい 23.2%
話すときは「山積み」、書くときは「山積」 21.9%

4分割に近い結果となりましたが、毎日新聞社の用語のルールにも合致している「山積する」が一番多いという結果になりました。意外に皆さん、「さんせき」も使っているという印象を持ちました。

使い分けの根拠は分からず

「さんせき」と「やまづみ」はお分かりの通り、同じ言葉の音読みと訓読みの関係にあります。それをなぜ使い分けるのか。正直に申し上げると、よく分かりませんでした。

ただ、例えば「そくせき」と「あしあと」はともに「足跡」であり、同じ意味の言葉ですが、現在では地面に残った足形の痕跡には「あしあと」を使い、人の過去の業績については「そくせき」が多く使われます。

「山積」も根拠はあやふやながら、何となく生じた使い分けをルールとして定着させたものが現在の新聞協会用語集や毎日新聞用語集に記載されているのではないかと思われます。

毎日新聞用語集より

比較的新しい「やまづみ」

「さんせき」と「やまづみ」では、「さんせき」の方が以前から使われていたようです。初出の用例を載せる方針の日本国語大辞典(2版)では、「さんせき」が松原岩五郎「最暗黒之東京」(1893年)。しかし「やまづみ」の初出も小林多喜二「蟹工船」(1929年)で、目立った差がある、というほどではありません。

ただし、青空文庫のサイト内を「山積」で検索すると、出てくるのは「さんせき」と読みそうなものが大半でした。bingの検索結果では「山積み」7件に対し「山積」が79件。古くからよく使われていたのは「さんせき」の方だと言えそうです。

広辞苑の旧版を見ると、「やまづみ」が見出し語として採録されたのは2版から。初版では、見出し語になっていたのは「さんせき」のみでした。こうしたことも「さんせき」の方が古いという根拠になるかと考えます。

過去には「さんし」の読みも

さらに古い国語辞典を見ると、「言海」(「さ」の入った巻は1889年)には採録なし。「大言海」(同1933年)の「山積」は「さんし」と読むのが本項目(「さんせき」はこちらに誘導される)ですが、意味は「山ノ如ク積(ツモ)レルコト。衆多ナルコト」で、今の用法と同じです。

「大辞典」(1936年完成)は「サンシ 山積」「サンセキ 山積」の項目がそれぞれ独立しており「山の如く沢山積み重なりたること」と、やはり現在と同様の語釈が載っています。いずれにも「やまづみ=山積み」は記載されていませんでした。

これらから見て、そもそもは「さんせき」が使われていたところに、よりカジュアルな読み方として「やまづみ」が派生したのではないかと考えられます。「山積み」の用例がある「蟹工船」はプロレタリア文学作品として知られますが、プロレタリア文学は当時のモダンな文学でもあり、口頭表現も積極的に取り入れていたと見るべきでしょう。

意味上は「さんせき」「やまづみ」ともにOK

毎日新聞などの使い分けは、見た目で「やま」になっているものには「やまづみ」を使い、問題など抽象的なものには「さんせき」を使う、ということになっています。本来の用法というならば、おそらく全て「さんせき」とすべきところなのでしょうけれど、「やまづみ」が現に使われていることを踏まえた上で、直観的に分かりやすい使い分けとして現在の形が選ばれたのではないかと考えます。

アンケートの結果に関して言うなら、意味上としては「どちらでもよい」が現在の状況を反映した答えでしょう。ただ、本来は「さんせき」であると考えられることから、改まった場面などでは「さんせき」を使うことが多くなるのも自然なことと言えます。

また、口頭での聞き取りやすさなどを考えて、場面によって使い分けるというのも「あり」です。他の人やメディアがどう使い分けているかを観察するのも面白いのではないかと思います。

 

(2019年02月01日)

質問に際して

毎日新聞用語集には「山積」の項目で「『山積する』は問題などが多いこと、『山積み』は荷物が滞っている場合などに使う」と使い分けを案内しています。

ただ、この使い分け、毎日新聞以外ではあまり見たことがないような。ほかの新聞社や通信社の用語集を見てみましたが、あれ、どの社にも載っていない――と思ったところ、見つかったのは放送局のものでした。NHKの漢字表記辞典(2011年)には「さんせき 山積 問題が~する」「やまづみ 山積み ~の滞貨」という例が載っています。

放送では読み方が具体的な問題になるので「山積」を「やまづみ」と読んでしまわないように記しているのでしょう。新聞協会用語集(07年)の「放送で標準とする読み方例」に同様の記述がありますから、放送各社には使い分けが周知されているのかもしれません。

国語辞典を見ると、「山積」は「うず高く積もること。また、解決すべき問題や仕事などが沢山たまること」、「山積み」は「山のように高く積もること。また、解決すべき問題や仕事などがたくさんたまること」(いずれも日本国語大辞典2版)。うーん、用語集の使い分けをよそに、どうも現在では全く同じ意味で使われるように思えます。

口頭で使うなら「山積み」の方が理解しやすいでしょう。個人的には、口頭と筆記で別表記にするのが良いかと思いますが……回答は「山積み」一色になるような気もしております。

(2019年01月14日)

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