今年のえとは「亥年」とする人が7割でしたが、「イノシシ年」も同じことという人も4分の1。日本では最初から動物と結び付けられていたと考えられますが、もともと十二支は「記号」ですから、一般的には「亥年」をおすすめします。

えとで言うと今年は何年になるかを伺いました。

スポンサーリンク

「どちらも同じ」4分の1

新年早々のアンケートです。えとで言うと、今年は何年でしょうか?
亥(い)年 70.5%
イノシシ年 5.4%
上の二つは同じこと 24.1%

 

「亥年」という回答が7割を占めましたが、「亥年」と「イノシシ年」は同じことだという回答も4分の1に上っています。同じと言ってよいのかどうか。毎日新聞では「イノシシ年」とは書きませんし、「今年のえとはイノシシ」と言うこともありません。動物をかたどった「えとの置物」は「えとにちなんだ置物」などと直すようにしています。

これは「えと≠動物」という立場からなのですが、通信社の記事には下の写真のようなものも見られます。


これは「イノシシ年」でも差し支えない、という立場によるものと思われますが、どう考えるべきでしょうか。

十二支は時刻や方位を表す記号

「えと」は漢字で書けば「干支」。字に見る通り「十干と十二支とを組み合わせたもの」で、「年月・時刻・方位などを表す呼称として用いられる」(大辞林3版)。回答からの解説にも書いたように2019のえとは「己亥(つちのとい、きがい)」となるのですが、十干については現在でも暦に記されているとはいえ、日常的にはあまり触れられることはありません。ここでは辞書の語釈の二つ目「十干十二支のうち、十干をはぶいて、十二支だけで表した年をいう。子年・丑年・寅年など」(同)について取り上げます。

十二支はご存じの通り「子=ね、丑=うし、寅=とら、卯=う、辰=たつ、巳=み、午=うま、未=ひつじ、申=さる、酉=とり、戌=いぬ、亥=い」。記した読み方は日本語の訓読みですが、これが既に動物に由来する読みであり、十二支と動物のゆかりの深さを感じます。これらは江戸時代までは、時刻や方角を表す際に普段から使われていました。「草木も眠る丑三つ時」といえば丑の刻を四つに分けたうちの3番目の時間帯(午前2時から2時半ごろ、または午前3時から3時半ごろ)。皇居の乾門(いぬいもん)は戌(西北西)と亥(北北西)の間の方角、すなわち戌亥=北西にある門のことです。機能としては動物を離れ、あくまで記号として使われています。

桜の季節の皇居・乾門 by laggnugg

日本では最初から十二支と動物が結びつく

その十二支に動物が割り当てられているのはどうしてか。一説には、庶民が十二支を覚えやすいようにするためと言われています。中国では戦国時代(紀元前5~紀元前3世紀)にさかのぼるといい、軽く2000年を超える歴史があることになります。

日本でもキトラ古墳(7世紀末~8世紀初め)に描かれた十二支像のように、古くから動物を割り当てた十二支が知られています。諸橋轍次は「十二支物語」において「日本国語大辞典」の受け売りとしつつ、「万葉仮名のできた頃にはすでに十二支が伝わっていて、子・丑・寅・卯などをそれぞれ鼠・牛・虎・兎などと解していたことがよくわかります」といいます。日本において、十二支は最初から動物と結びついていたと考えるのが自然でしょう。

一般的には「亥年」がおすすめ

亥(ガイ)を「い」と訓ずること自体がイノシシと結びついている以上、「亥年」を「イノシシ年」と同じと考えるに差し支えないのではないか――そう言われると、正直なところ返答に窮してしまいます。ただし文字としてはあくまで「亥年」でなければならず「猪年」と書くと意味が通じなくなりますし、「亥」に「いのしし」という読みを当てることは一般的ではないので、「亥年」と言う方がよいのではないか、と考えます。

アンケートの結果では「亥年」が大勢を占めたので、「イノシシ年」とは言わないようにしている毎日新聞の立場もご理解いただけるかもしれません。ただ、えとと動物を同一視することも無理とは言い切れないほどに、そのつながりは古く強いものであるとも言えます。記事においては今後も「亥年」などと書きますが、口頭では、生まれ年を問われて「イノシシ」と答えることがあってもよいのではないかと思います。

(2018年01月18日)

質問に際して

明けましておめでとうございます。本年も皆さんに言葉についての質問をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、「えと」とは何かというのは「毎日ことば」の中にも何度か出てきているのですが、十干と十二支、すなわち「中国の上古に始る暦法上の用語」(ブリタニカ小項目事典)のこと。年ごとに、日ごとに十干十二支が割り当てられており、2019年であれば「己亥(つちのとい、きがい)」、1月1日は「戊戌(つちのえいぬ、ぼじゅつ)」となります。

そのうち十二支に動物を当てはめたものが、いわゆる「十二支」として知られます。19年の十二支は「亥」で、動物は周知の通り「イノシシ」が割り当てられているのですが、問題になるのはここ。「亥年」=「イノシシ年」と言ってよいか?ということです。

十二支に動物が割り当てられたのは事の起こりも分からないほど古いことで、同一視してもよいという考え方もあるでしょうし、本来の十二支は記号なのだからやはり「イノシシ年」はおかしい、という考え方もあるでしょう。毎日新聞は後者の考え方をとっていますが、皆さんはいかがでしょうか。

(2018年01月02日)

スポンサーリンク

twitter

過去記事から