「今年も『押し迫って』まいりました」とする人が7割を占めましたが、辞書を見る限り「今年は~」という場合には「押し詰まる」を使うのが一般的と言えそうです。「押し迫る」は「年末」「年の瀬」などにつなげる方が相性は良いでしょう。

「今年も残り少なくなった」ことを表す言い方について伺いました。

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「押し迫る」が7割占める

今年も「○○」まいりました。「○○」に入れる言葉は何を使いますか?
押し迫って 65.7%
押し詰まって 29.3%
どちらでもよい 5%

 

 こちらが使用をお勧めした「押し詰まって」が少数派で3割弱。「押し迫って」が3分の2、「どちらでもよい」を含めると7割強を占めました。うーん、解説を読んだうえで意見が変わった人もいるでしょうか。

辞書は「押し詰まる」に軍配

 回答から見られる解説では広辞苑と大辞林の用例を紹介しましたが、他の辞書の用例も引いてみます。基本的には年末や年の暮れといった内容の絡む例文を挙げましたが、当てはまるものがない場合には掲載されているものを挙げました。

<押し迫る>

大辞泉2版「暮れも押し迫った一二月二八日」

集英社3版「期日が押し迫る」

現代国語例解5版「期日が押し迫る」

明鏡2版「年の瀬が押し迫る」

新選9版「しめきりが押し迫る」

岩波7新版(項目なし)

三省堂7版「年の瀬も押し迫ってきた」

新明解7版「年の瀬も押し迫る」

<押し詰まる>

大辞泉2版「今年もいよいよ押し詰まりまして」

集英社3版「暮れも押し詰まってきた」

現代国語例解5版「今年も押し詰まってまいりました」

明鏡2版「今年もいよいよ押し詰まってきた」

新選9版「今年も押し詰まった」

岩波7新版「今年も押し詰まってきた」

三省堂7版「情勢が押し詰まる」

新明解7版「今年もいよいよ押し詰まる」

 これらを見る限りでは、「今年は~」という場合には「押し詰まる」を使うのが一般的と言えそうです。「押し迫る」は「期日が押し迫る」という用例が挙げられていることからも分かるように、特定のポイントに近づく意味合いを持ちます。「今年」という、幅のある期間について使うよりは、「年末」「年の瀬」などにつなげる方が相性は良いでしょう。

 「押し詰まる」の方は「ゆとりがなくなる。切迫する。さしせまる」(広辞苑7版)のような語釈が一般的。「今年」という期間のゆとりがなくなるという意味で「今年も押し詰まる」と言える一方、集英社国語辞典のように「暮れも押し詰まる」のような形を取ることもあります。

語感の違いを挙げる説も

 一方、NHKの「ことばのハンドブック第2版」には別の使い分け方が示されています。「押し迫る・押し詰まる(暮れも)」の項目はこのように言います。

 「暮れも押し迫る」と「暮れも押し詰まる」は、次のような意味合いで使い分けがある。 押し迫る……暮れに近くなること。 押し詰まる…暮れの中でも終わり(12月末)に近づくこと。

 「今年も~」という使い方ではなく、「暮れも~」という場合の語感の差についての説明のようです。この説はNHKによる解説以外では見たことがないのですが、どうなのでしょうか。

 日本国語大辞典2版の「おしつまる」の項目には、「年の暮れに近くなる。年末が近づく」という語釈の用例で、田山花袋の「妻」から「押詰(オシツマ)って十二月も三十日、門松を買って来て立てるやら」というくだりが引かれています。これを見ると確かに年末も年末、なのですが、一方で樋口一葉の「われから」より「十二月の十五日、世間おしつまりて人の往来大路いそがはしく」というくだりもあり、こちらは12月15日。「終わり(12月末)に近づくこと」と言ってよいものか、判断に困ります。

「今年も」なら「押し詰まる」を

 話を「今年も~」の場合に戻すと、「今年も押し迫って」を選んだ人が「今年も押し詰まって」よりも多かったのは意外でした。年末の一種の決まり文句として、「暮れも」「年の瀬も」「今年も」などを一様に「押し迫る」で受ける人が多いのかもしれません。NHKの説をとれば「押し迫る」の方が使用できる時期が広いということにもなりますし。ただし、辞書に掲載されている用例や意味から見ると、「今年も~」のように期間を示す言葉に対しては、「押し詰まる」の方がよりふさわしい、としたいところです。

 この原稿の掲載日(31日)におきましては、今年もいよいよ押し詰まりました。本年はアンケートにご協力いただきましたこと、あらためて御礼申し上げます。皆様にはどうぞ良いお年をお迎えください。

(2018年12月31日)

質問に際して

「押し迫る」と「押し詰まる」。広辞苑(7版)はいずれにも「年末に近くなる」という語釈を載せていますが、違うのは用例です。「暮れも押し迫った頃」といい、「今年も押し詰まった」としています。「暮れ」すなわち「一年の終わり」という“期限”と、「今年」という“期間”との違いと言えるでしょうか。

広辞苑によれば、年末うんぬんというくだりを除くと、「押し迫る」の意味は「強く差し迫る」ことで、「押し詰まる」は「ゆとりがなくなる」こと。別の辞書には「締め切りが押し迫る」という用例もあるように、迫ってくるものは“期限”であって“期間”ではないと言えるでしょう。してみると「今年も押し迫って……」というのは違和感のある言い回しです。

もっとも大辞林(3版)のように「今年も大分押し迫りましたね」という用例を載せている辞書もあり、この場合は「今年」を「今年の終わり」と理解しているのかもしれません。しかし、「今年」という“期間”が残り少なくなって「ゆとりがなくなる」とする方が素直な考え方ではないかと思います。ここは広辞苑の用例と同様に「今年も押し詰まって」を使いたいところです。

(2018年12月10日)

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