回答は真っ二つでした。文法的には正しい「到着し次第」は発音しにくく、迷いが生まれるのも当然と思われます。一般的には「到着次第」も許容されると考えてよく、気になる場合は別の言い方にするのがよいでしょう。

「次第」を使った「~したらすぐに」という表現について伺いました。

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「次第」「し次第」真っ二つ

「着いたらすぐに」連絡します――言い換えるならどちらですか?
到着次第 52.5%
到着し次第 47.5%

 

 真っ二つに近い結果になりました。当たり前に使う表現ながら、校閲記者だけでなく皆さんも迷いやすい言葉なのだろうと思います。

正しくとも使いにくい「し次第」

 回答からの解説でも触れたように、「次第」は「《動詞の連用形に付いて》その動作が終わるとすぐに、の意を表す」(明鏡国語辞典2版)。したがって「到着し次第」というのが、通常の法則に沿う使い方だと言えます。しかし「し次第」というのは、何だか落ち着かない形でもあります。

以下はNHK「ことばのハンドブック第2版」から。

「~しだい」は、「そのことが終わるとすぐ」の意味の場合、動詞の連用形に付く。

 〈例〉完成ししだい

 しかし、このようにサ変動詞に付いた場合の「~ししだい」という形は、「し」が重なって発音しにくく、話しことばとしてはこなれていないので、なるべく使わない方がよい。

 言いかえは「完成したらすぐに(ただちに)」「完成後に」など。

 「話しことばとしては」と限定しつつも、「し次第」という表現の使用をためらう様子がうかがえます。文法的には正しいとしても使いにくい表現だということです。書き言葉としては問題ないと考えることはできますが、話し言葉として使いにくく感じるようであれば、書くに当たっても迷いなく「し次第」を選ぶことにはならないでしょう。「次第」と「し次第」とで迷いが生まれるのも当然と思われます。

文字の脱落も違和感なし

 この問題は、本欄ではおなじみの文化庁「言葉に関する問答集」にも「『終了しだい』か『終了ししだい』か」として取り上げられています(「問答集8」1990年)。

 問答集もやはり、連用形と接続する「終了ししだい」をまず挙げるのですが、「これだと、『し』が重なって発音しにくいせいか、語幹の『終了』に直接『しだい』を付けて『終了しだい』とすることも多い。今日では、この言い方を否定し去ることはできないであろう」と言います。30年近く前の「今日」においても「し」の脱落は当たり前だったようで、殊更にとがめ立てされてはいませんでした。

 一方で、たとえば「定員に達し次第、締め切ります」のような言い方では、「達次第」になることはありません。単に「し」が重なって発音しにくいというだけでなく、漢字の熟語が重なる形は見慣れたもので違和感がないということも、「終了次第」のような形で「し」が省略される理由として考えられそうです。

気になる場合は言い換えを

 今回のアンケートの結果は「到着次第」「到着し次第」で真っ二つに割れましたが、使用の実態から見ても、どちらかを推すというのは難しく感じます。校閲記者としては文法的に正しいとされることが多い「し次第」を使うべきかもしれませんが、これはやや厳格な考え方と言えそうです。

 一般的には「到着次第」も許容されると考えてよく、それでも気になる場合には、例えば「完成し次第」なら「出来上がり次第」などに言い換えるというのがよいと思います。

(2018年12月25日)

質問に際して

 和語ならば「着き次第」となるように、「次第」は「《動詞の連用形に付いて》その動作が終わるとすぐに、の意を表す」(明鏡国語辞典2版)。「到着する」の連用形は「到着し」。従って、まず“正解”に近いのは「到着し次第」の方だと言えるでしょう。

 ただし明鏡では[語法]として「俗に、『到着し次第連絡する』を『到着次第連絡する』のように、直接動作性の名詞に続ける言い方もある」と注記します。俗用ながら「し」を入れない書き方もあるということ。大辞泉(2版)はさらに踏み込んで「動詞の連用形または動作性の名詞について、その動作が済むと直ちにという意を表す」と、名詞に直接「次第」を付ける用法を認めています。

 それでも、新聞社の用語集の中には「『帰宅し次第』などサ変動詞に接続する場合は連用形の活用語尾『し』を省かないよう注意する」と目配りしているものもあり、「到着次第」を認めない意見も根強いようです。見解の割れそうな言い回しですが、皆さんはどうお使いでしょうか。

(2018年11月29日)

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