「部活動では、いまだに体罰が行われている」の「いまだに」は3分の2が漢字なら「未だに」を使うとしました。「今だに」では、と感じる人もいそうですが、語源的には「いま+だに」ではなく「いまだ+に」が有力で、正統とは言いづらい表記です。

肯定文の場合に「いまだに」を漢字でどう書くかについて伺いました。

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「未だに」が3分の2

「部活動では『いまだに』体罰が行われている」。漢字で書くと?
未だに 64.7%
今だに 29.6%
どちらでもよい 5.7%

 

 3分の2が「未だに」との回答で、「今だに」を使う人は「どちらでもよい」を含めて3分の1。新聞用語集や辞書でも主流の考え方が多数派となりました。

「未」に違和感、との意見も

 「今だに」でもよいと考えた人の中には、「出題された例文は、現在もその状態が続いているという肯定文だから『未だに』よりしっくりくる」と感じた方もいるのではないでしょうか。毎日新聞の記者も過去のコラムで次のように書いていました。「『今だに覚えている』と書いたら『未(いま)だに』と直された。しかし『未』の字には、『その状態に至らない』という印象が漂う。覚えて『いる』のに『未だ』とは?」

 「未だに」には「今でも」「今もなお」という意味があり、「否定の語を伴っても用い、肯定文でも用いる」(日本国語大辞典2版)ので、肯定文なら「未だに」が使えないわけではありません。それでも確かに「未熟(まだ熟していない)」「未定(まだ決まっていない)」など、「未」の漢字は多く「その状態に至らない」という意味で熟語を形成します。漢文を「未ダ……ナラズ」などと書き下すことを考えても、「未だに行われている」に違和感を覚えるのは理解できます。今回のアンケートで「今だに」を選んだ人のうち一定数も同様の感覚ではないかと思いますし、「今だに」を認める辞書はそれを反映しているのでしょう。

「いまだ+に」が有力

 しかし現代国語例解辞典5版には「『今だに』と書かれることもまれにあるが、語源的には『いまだ+に』であると思われる」とありました。「今だに」の見出し語もある日国の編集者・神永暁氏も、夏目漱石が「坊っちゃん」で「今だに」を使っていることを指摘しつつも次のように書いています。

「いまだに」は、副詞の「いまだ」に、助詞の「に」が付いたと意識されて使われてきた語だとする説が有力である。つまり「いまだ・に」であって、「いま・だに」ではないというわけである。(中略)「今だに」という表記は、おそらくこの語を「いま・だに」に分けられると解釈して生まれた表記であろう

 というわけで、「『今だに』と書くのは誤り」(大辞泉2版)と言い切るのは難しくとも、「今だに」はやはり正統とは言いづらく、アンケート結果から見ても違和感を持たれる可能性は高そうです。文脈上「未だに」を使うのに抵抗感がある、という場合は「仮名書き派」であるという神永氏のように平仮名にしてしまうか、もしくは日国の語釈のままに「今でも」「今もなお」などとしてしまうのがよいのではないでしょうか。

 ところで前述のコラムの筆者は広辞苑の編集者に問い合わせ、「『覚えている』と続くなら『今だに』が適当でしょう」との返答を得ていました。書かれたのは2008年、「未だに」の表記しかなかった6版が出た直後でした。7版で「『今だに』とも書く」と追記された背景には、もしかしたらこの筆者の問い合わせもあったかもしれません。

(2018年12月14日)

質問に際して

 新聞では「いまだに」を平仮名で表記することに決めています。これは「未だに」を本来の表記と捉えるものの、この読み方が常用漢字表に無いためです。各社の用語集では「今だに」という表記が存在すること自体は認めているものもありますが、紙面では採用していません。辞書の多くも「未だに」の表記をメインにしており、大辞泉2版は「『今だに』と書くのは誤り」と補説で言い切っています。

 しかし日本国語大辞典2版では「いまだに」を「今+だに」の形と「未だ+に」の形の二つに分けて意味を記しています。前者は「今でさえ。今でも。今もなお」。後者は副詞「未だ」と同じであるとして、「今でも。今もなお。まだ」。肯定文と否定文で使い分けるのかとも思いましたが、そのようなこともなく意味の違いはほとんど分からず。問題の例文ではどちらの表記も当てはまりそうです。

 広辞苑は今年の7版への改訂で「『今だに』とも書く」という注記を加えました。現在は傍流の「今だに」表記を認める人はどれぐらいになるでしょうか。

(2018年11月26日)

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