「齟齬」のような難読語は新聞で「使ってもよい」「読みがな付きなら」を合わせて8割超と、大多数が難読の漢字でも使用可という回答でした。パソコンやスマートフォンが、難読語に対する抵抗感が薄れていることの一因になっていると考えます。

「齟齬(そご)」のように難しい漢字を使う言葉について伺いました。

大多数が「難読の漢字でも使用可」

「食い違い」という意味の「齟齬」。こうした難読語も新聞は使ってよいでしょうか。
使ってもよい 41.5%
読みがな付きならよい 42.5%
ひらがな書きならよい 1.5%
別の言葉にした方がよい 14.4%

 

「使ってもよい」「読みがな付きならよい」の二つを合わせて8割超と、大多数が難読の漢字でも使用可という回答でした。予想以上に難読漢字への許容度が高いと感じます。回答した人は校閲のツイッターをフォローしている人が多いことと思いますが、フォローしてくださっているのは日ごろから言葉に関心を持っているから、のはず。それだけに難しい漢字への抵抗感も少ないのでしょうか。新聞でたまに現れる「ひらがな書き」への支持はほんの僅か。少なくとも「齟齬」に関しては、ひらがな書きにするのは控えた方がよいかもしれません。

校閲のツイッターに寄せられた意見は「読みがなを付ければ、それを通じて読み方を覚えられるのでよい」というものが多かったようです。「なんか難しい文字とか出てくると読む気なくす」という人はいないのか、とも思いましたが、皆さんが文化としての漢字や日本語を大事にしていることがうかがえ、頭の下がる思いです。

今回、回答から見られる解説では「齟齬」のほかに「軋轢」「灌漑」「躊躇」を難読語の例に挙げました。ふだん文字として書くことは決して多くないだろう言葉ですし、読めても書くことはできるかどうか。そういえば「漢字読めるけど書けない」という歌もありましたっけ。校閲記者なら一応これらも書けるはず、とは思いますが……。もっとも、逆に「書けないけど読める」とも言えます。スマートフォンやパソコンなどを使えば、読み方の分かる言葉なら漢字に変換することも容易です。難読語に対する抵抗感が薄れていることの一因になっていると考えます。

思えば2010年に答申された改定常用漢字表には、このように情報機器などを使えば簡単に表示することができる文字をどうするか、という問題意識も掲げられていました。05年に文部科学相から文化審議会に対して出された「情報化時代に対応する漢字政策の在り方について」という諮問がきっかけです。「パソコンや携帯電話が漢字の使い方に大きな影響を与えているから、常用漢字表を検討して、日本の漢字使用をどうするか考えてほしい」というほどの内容でした。

結果として出てきたのが旧漢字表に196字を追加(5字を削除)したものにとどまったことには首をかしげたくなる面もありますが、漢字表の「基本的な考え方」では、情報機器は「読む行為」よりも「書く行為」について支援する役割が大きいことを指摘しています。情報機器のお陰でいろいろな漢字を表示するのは楽になったけれど、読む能力まで上がるわけではないから、漢字使用の目安として漢字表を作る意味はありますよ――という趣旨。ここでは「書けないけど読める」とは逆に「(書き手は)表示できるけど(読み手は)読めない」ことが心配されています。

新聞としては、読みにくい文字を使うことで読むのを嫌がられることを懸念して、なるべく常用漢字表の範囲内に漢字使用を抑えたいと考えるのですが、今の社会では漢字使用それ自体よりも、漢字で出せるものをひらがなで書いてしまうことへの抵抗感の方が強いのかもしれません。読みがなを付けて漢字を使うか、不自然でない形で言い換えるか――というのが良さそうです。

田部井文雄さんの「『完璧』はなぜ「完ぺき」と書くのか」(大修館書店)は、新聞などによる、漢語の一部をかな書きにした「交ぜ書き」を糾弾した本ですが、中に「仮名書き熟語抄録」として、新聞がひらがな書きにしている漢字熟語が列挙されています。常用漢字表の改定で解消されたものもだいぶありますが、「齷齪」「傀儡」「矍鑠」「杜撰」「蹂躙」「顰蹙」「朦朧」などは今もかな書きです。ちなみに読みは「あくせく」「かいらい」「かくしゃく」「ずさん」「じゅうりん」「ひんしゅく」「もうろう」。どのあたりまでは、かな書きのままでも許されるものでしょうか。

(2018年11月23日)

質問に際して

以前、アンケートで「改ざん」を取り上げたときは交ぜ書きについて伺いましたが、今度はひらがな書きについて。新聞では特に難しい漢字を含む熟語は、音読みの語(漢語)でもひらがな書きにすることがあります。「ちゅうちょ(躊躇)」「あつれき(軋轢)」「かんがい(灌漑)」などはおなじみかと思います。

今回の質問で例に挙げた「齟齬」の読みは「そご」。毎日新聞用語集では「食い違い、手違い、行き違い」という言い換えのみを載せており、使用を避けているのですが、外部筆者の書いたものや、記者の原稿でも発言の引用などでは、読みがな(ルビ)付きまたはひらがな書きで使用されることがあります。一方、共同通信の用語集ではルビ付きでの使用を認めています。容易に読み書きできない漢字については使用を控えたいと考えますが、皆さんの考えはどうでしょうか。

(2018年11月05日)

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