「ウラジオ」という略に違和感があるという回答が7割でした。100年前に「浦塩」などと略されていましたが、問題は、意味の上では「ウラジ/オストク」と分かれる言葉をウラジオと略すことのアンバランスさです。

ウラジオストクを「ウラジオ」と略すことについてうかがいました。

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「ウラジオ」に違和感が7割

ロシアの都市「ウラジオストク」。「ウラジオ」と略すのは……
問題ない 28.8%
おかしい 71.2%

 

予想より多い7割の方が違和感があるという回答でした。出題時の解説で100年前に「浦塩」などと略されていたことに触れましたが、問題は、意味の上では「ウラジ/オストク」と分かれる言葉をウラジオと略すことのアンバランスさです。

藤井青銅「略語天国」(小学館)では、「長いカタカナ言葉は4文字に略す」という法則を提唱し、そのほとんどが「リストラ(クチャリング)」などのように最初の4文字を抜き出したものか、「セク(シャル)ハラ(スメント)」のように連語の頭2文字ずつをつなげたもののどちらかだと分析しています。ウラジオは前者にあてはめられます。リストラ(re-structuring:直訳すると「再構築」でしょうか)についても、単語の構造はほぼ考慮されていないと言っていいでしょう。同書は「似た音の日本語を連想させる場合は略語化されやすい」として、これは動物の「リス・トラ」に合致していることを指摘しています。

タンザニアの山キリマンジャロの名前の意味は「キリマは<山>、ンジャロは<輝く>の意だと伝えられる」(世界大百科事典)。しかしこの地域で取れたコーヒー豆の略称は「キリマン」。これも「霧・満」のような連想からでしょうか。もしくは「ウルトラマン」のような「〇〇マン」に合わせたのでしょうか。いずれにせよ耳になじんだ言葉に略語が似通うと受け入れやすいということでしょう。ですから漢字で「浦塩」などと日本語っぽく書けてしまうウラジオも抵抗感は小さかったはず。意味よりも語感・リズムの方が、日本人が略語を作る際に優先されがちなのはいつの時代も変わらないようです。

ここまで「ウラジオ」擁護の見解ばかりになってしまいましたが、もちろん中途半端な略語にすることで本来の意味が忘れられてしまう弊害はあるでしょう。今回のアンケートでも多くの人が違和感を覚える結果となっています。過去の毎日新聞紙面では「ウラジオAPEC」といった見出しもあり、文字数が限られる中で3文字減らせるのは魅力で、いつでも略さずに表記できるわけではありません。

ではどうするかというとまた難しいのですが、同書では、若者は4文字の略語より3文字の略語を好むと指摘しています。ツイッターでコメントがあった「のだめ」(漫画「のだめカンタービレ」の主人公、野田恵の愛称)がヒットした一因もこの3文字略語かもしれません。ならば便乗して意味の切れ目でもある「ウラジ」まででいいのでは……などと考えてしまいましたが、ひとまずは今年のウラジオストクでの会議について、紙面に「ウラジオ」の見出しがなかったことにほっとしているところです。

(2018年09月28日)

質問に際して

北朝鮮の金正恩委員長が参加するのではないか、などと注目された東方経済フォーラムがロシアのウラジオストクで11~13日に行われます。このウラジオストク、長いため時に「ウラジオ」と略されますが、この地名は「<東方(ウォストーク)を征服せよ(ウラジ)>というロシア語に由来」します(「世界大百科事典」)。ですから「ウラジオ」では中途半端で、新聞の見出しではできれば略さず書いてほしい気にもなります。

しかし2012年8~9月、毎日新聞に「浦塩(ウラジオ)物語」という企画記事が掲載されており、そこにはこうありました。「100年ほど前、日本で『浦塩(または浦潮)』の名で知られ、日本人も最大時で約5000人いたというロシア極東のウラジオストク」。「ウラジオ」は100年の歴史を持つ伝統的な略し方なのです。

外来語の原語に敏感な方からすると違和感があるかもしれませんが、元の意味にとらわれずに語呂がいいように省略するというのは極めて日本語的であるとも思えます。

(2018年09月10日)

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