「一段落」の読み方は、本来の読み方ではないとされている「ひとだんらく」が6割と多数を占めました。25年前には辞書は認めていなかったということですが、現在は多くの辞書で触れられています。

「一段落」の読み方について伺いました。

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本来ではない「ひとだんらく」が6割

ひとくぎり、という意味の「一段落」。どう読みますか?
いちだんらく 40.6%
ひとだんらく 59.4%

 

本来の読み方ではない、とされている「ひとだんらく」が6割と多数を占めました。回答から見られる解説では「『ひとだんらく』が多数派になると予想します」と書きましたが、その通りの結果でした。

正直に言うと出題者自身が「ひとだんらく」と言いがちです。校閲記者でありながらなんとしたこと、とおりが聞こえてきそうで面目次第もないのですが、一度覚えてしまった言葉というのはなかなか抜けないもの。今回のアンケートの結果を見て、多勢の援軍を得た思いがします。

回答からの解説でも一部を引きましたが、文化庁の「言葉に関する問答集19」(1993年)によると、当時出版されていた17種類の国語辞典では全てが「イチダンラク」を掲げており、「『ヒトダンラク』としているものは、一冊もない。また、注記などの形で『ヒトダンラク』に触れているものもなかった」そうです。しかし、最近の辞書では事情が変わってきています。

2010年以降に出版された国語辞典8点(広辞苑、大辞泉、明鏡、新明解、三省堂、岩波、新選、集英社――の最新版)を見ると、うち6点が「ひとだんらく」の項目を設けています。4点は「いちだんらく」に矢印で誘導するのみで、2点は「いちだんらく」の誤読という説明を記したものですが、項目ができたというのはそれだけ使われるようになったということ。項目を設けていない2点のうち1点でも「いちだんらく」の項目に「『ひとだんらく』ともいう」と記しており、全く触れていなかった辞典は1点(新明解)だけでした。

「言葉に関する問答集19」では、なぜ「ひとだんらく」が使われるようになってきたかについて考察を加えています。そもそも「一」は数量を表すのではなく、「すこしの」「ちょっとした」という意味に変わっている▽「一」を冠する2字あるいは3字の熟語で、「イチ―」という読み方でこのような意味を持つものには「一断面」「一面識」などがあるが、むしろ「ヒト―」という語形のものにその例が見られる(「ひと休み」「ひと仕事」など)▽類似の意味を持つ「一区切り」が「ひとくぎり」である――といった理由から、「ひと段落」への変化が起きているのではないか、としています。

それでも25年前には辞書が「ひとだんらく」を認めていなかったこともあって、「問答集」は「普通の言い方としては『イチダンラク』を採るのが穏当であろう」としていますが、辞書でも採録が進んできた現在では、そうとも言い切れなくなったのではないでしょうか。

書き言葉では「一段落」が多いので、校閲の作業で問題になることはあまりありません。が、仮に「ひと段落」と書かれた原稿を目にしたとしても「いち段落」にするようなことは避け、あえて直すなら「一段落」として読者に読み方を委ねるのがよいのではないかと思います。

(2018年09月21日)

質問に際して

国語辞典を見てみると、「ひとだんらく」は「いちだんらく(一段落)の誤読」とにべもないのは大辞泉(2版)。もっとも、「いちだんらく」の項目の「補説」には「『ひとだんらく』と読むのは誤りだが、話し言葉では使われることも多い」とあり、少し物腰が柔らかくなっています。この2版が出たのは2013年ですが、1995年の初版には「ひとだんらく」の項目自体も言及もありませんでした。文化庁の「言葉に関する問答集19」(93年)によると、当時出版されていた17種の国語辞典で「『ヒトダンラク』としているものは、一冊もない」とのことです。

このように本来の読み方は「いちだんらく」とされていますが、近年は「ひとだんらく」の方がむしろ多く使われるのではないか、という印象を持っています。毎日新聞の過去記事を見ると、芥川賞受賞が決まった作家から寄せられた手記にも「ひと段落」が出てきます。「いちだんらく」が「正解」という意識は相当に薄れているのではないでしょうか。

今回のアンケートも「ひとだんらく」が多数派になると予想しますが、結果はどうなるでしょう。

(2018年09月03日)

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