「言語同断」が1割超ありましたが、なんと大漢和辞典は「言語道断」の後に「言語同断」も載せています。信頼できる文献にもあるのでそのまま載せたのかもしれませんが、一般的には誤りということはコンセンサスとしてよいでしょう。

3択で「『もってのほか』を表す適切な漢字は?」と聞いたクイズの結果は以下のようになりました。

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大漢和辞典には「言語同断」もあるが

今回はクイズです。「もってのほか」を表す適切な漢字は?
言語同断 13.8%
言語胴断 2.2%
言語道断 84%

 

不適切な「言語同断」が思いのほか多かった感がありますが、実際この字はよく見かけます。つい最近も毎日新聞の一部地域で誤字が紙面になってしまいました。

なぜこのミスパンチが生じるのか。「ごんご」と「どうだん」を分けて入力するからと思われます。パソコンで四字熟語の間違いを防ぐ鉄則は、一気に入力すること。しかしもしかしたら「げんごどうだん」と打ってしまっているのかもしれません。また一気に正しく打ったとしても、パソコンに妙な癖がついていると仮名漢字変換システムが「言語」と「同断」を分けて判断して「言語同断」となってしまう可能性もあります。理由はどうあれ、いかにもワープロ的な誤字と思っていました。 

ところが、なんと大漢和辞典は「言語道断」の後に「言語同断」も載せています。言語道断に同じとあります。

国語辞典では「言語同断」は誤りと注記する辞書はあっても、容認する辞書は見当たりません。しかし山田俊雄著「ことばの履歴」(岩波新書)によると、江戸から明治にかけての字引に「言語同断」が見られるそうです。それを触発したのは独立した熟語「同断」の存在ではないかと国語学者の著者はいいます。

ということは「言語同断」も誤字と言えないってことでしょうか。

しかし大修館書店「四字熟語辞典」では「『言語同断』とも書くが、『同断』は、同じであると判断する意味で、本来は誤用」とあります。誤字とはいうものの昔からよく書かれてきて、大漢和辞典は信頼できる文献にあるのでそのまま載せたのかもしれません。

「ことばの履歴」ではこの誤りは「しばしばおこり勝ち」として「現代の入社試験に臨む大学生がこんな語の書取りを誤ることなど、むしろあたりまえのようにさえ思われる」とあります。

とはいえ「言語同断」と試験で書くと×になることは必定。一般的には「言語同断」が誤りということはコンセンサスとしてよいでしょう。

なお出題時「道」は「いう」という意味と記しましたが、大辞林では「言葉で説明する道が断たれる」の意からとあり、文字通りに「道」を解する見方もあるようです。いずれにせよ「もってのほか」という意味で「同断」では理屈が通らないので「言語同断」は「言語道断」とすべきです。

(2018年09月11日)

質問に際して

言語「道」断が適切な漢字です。

漢和辞典の金字塔「大漢和辞典」の著者である漢学者、諸橋轍次は今の新潟県三条市に生まれました。その業績と漢字文化を次代に継承することを目的として、三条市は「諸橋轍次記念漢字文化理解力検定」を9月30日に開催(申し込み受け付けは8月31日まで)します。

「言語同断(ごんごどうだん)」はそのホームページで「正しい漢字に改めなさい」と出された例題の一つです。実際、この誤りはインターネットでニュース系も含めかなり見られます。察するに「言語」と「どうだん」を分けて入力し、「どうだん」の変換候補に「同断」「満天星」くらいしかないので変換ミスをするケースが多いのでしょう。

多くの辞書によると、「道」はここでは「いう」という意味で、言語道断は本来は「仏法は奥深くて言葉で言い表すことができない」ということを表す仏教用語でした。そういえば報道の「道」も「いう」という意味らしいのです。これを知っておくと、「どうだんの『どう』ってどうだっけ」と迷うことはありませんね。

その他の例題をみると、検定では単なる漢字の○×だけではなく、奥に踏み込んで豊富な漢字文化が問われることが予想されます。興味ある方はぜひ三条市の諸橋轍次記念館で挑戦してください。

(2018年09月11日)

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