「周年」は「主に」も含めると「良いことに使う」と考える人が8割を超えました。過去には悲劇的な出来事についても特に意識することなく使われていましたが、現在の語感では、凶事にあえて「周年」を使う必要はない、ということになるでしょう。

「○周年」という言い回しはどう使うのがよいか伺いました。

スポンサーリンク

「周年」は「主に」も含めると「良いことに使う」が8割超

「~から○周年」という書き方。どんな使い方がよいと思いますか?
良いことに使う。良くないことには使えない 56.1%
主に良いことに使うが、良くないことにも使える 30.1%
どんなことにも使う 13.8%

 

「主に~」も含めると「良いことに使う」と考える人が8割を超えました。「良くないことにも使える」と考える人も決して少なくはないのですが、「周年」は良いことに使う方がなじむとする傾向は、はっきり出ているのではないでしょうか。

「周年」の意味自体は「ある時から数えて過ぎた年数」(広辞苑7版)といった説明に尽きるようで、それを超えたニュアンスを付け加える辞書はほとんどありません。実際に、過去においては「ヒロシマ28周年」のように、悲劇的な出来事についても特に意識することなく使われていました。


毎日新聞(1973年8月5日朝刊)

しかし近年では、「周年」の受け止め方に変化が生じてきています。当ブログで以前、「『~周年』のニュアンス」として、この話題について取り上げました。

詳細はリンク先に譲りますが、辞書の用例からも、悪い場面では使わない傾向があるとし、読み手の感じ方に配慮して凶事にはなるべく「周年」は使わない、とする方針をつくりました。現在の毎日新聞用語集には「『震災○周年』は『震災から○年』などにする」という案内が示されています。

こうした扱いはひとり毎日新聞だけのものではなく、日本新聞協会の「放送で気になる言葉2011」では「『~周年』は創業10周年のような記念すべき場合に使い、事故や災害のような悪い出来事の場合には原則として使わない」としています。他紙の用語集でも「『△周年』を事故や災害から経過した期間を表すのに使うのはできるだけ避ける」との記述があります。いずれも正誤の問題として言葉の用法を規定しているわけではありません。情報の送り手として、受け手に与える印象に配慮した結果、生まれたルールと言えるでしょう。

アンケートの結果から見ても、「周年」は良いことに使うもの、という語感は定着が進んでいるようです。旧来の用法を踏まえれば「どんなことにも使う」で間違いではありません。私たちもそうした用法を排除しようと考えるものではありませんが、多くの人の受け止め方の変化を踏まえれば、凶事にあえて「周年」を使う必要はない、ということになるでしょう。

(2018年09月04日)

質問に際して

原爆投下の日を巡るアンケートの折に、「記念」を良くないことにも使うのはおかしいのではないか、というコメントをツイッターにいただきました。それについては毎日新聞本紙の「校閲発 春夏秋冬」で触れていますが、「教訓を伝える趣旨の使い方は珍しくない」ものです。思い返したいことについてだけでなく、記憶にとどめるべきことにも使うということでしょう。「原爆記念日」についていえば、人類史の教訓とすべしという思いが込められていたのだと思います。

似たように、良くないことについて使うと違和感があると言われるのが「周年」です。多くの辞書に載っている意味は「数を表す語に付いて、ある物事が始まってから、その数だけの年が過ぎたことを表す」(大辞林3版)のようなもの。どんな物事かを限定していませんから、どんなことに使ってもよさそうです。

しかし実際には、良いことに使う方がなじむという人が多いようで、毎日新聞でも災害などを振り返る場合は「周年」を使わないようにしています。この感覚は広く共有されたものでしょうか。

(2018年09月04日)

twitter

過去記事から