「原爆の日」が広く定着した言い回しのようです。「原爆記念日」は、現在では少なからぬ人から反感を受けそうですが、日本国語大辞典では主項目になっています。そもそも「記念」に祝うニュアンスはありませんでした。

原爆が投下された日の呼び方について伺いました。

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「原爆の日」が7割以上 「原爆忌」も2割超

8月6日は広島に原爆が投下された日。どの呼び方がしっくりくるでしょうか。
原爆の日 72%
原爆記念日 6.3%
原爆忌 21.7%

 

「原爆の日」が7割以上を占めており、ほかの言葉よりも広く定着した言い回しと考えてよさそうです。俳句などで多く見かける「原爆忌」も2割を超え、一定の支持を得ました。

「原爆記念日」はあまり支持を得られず。しかし、日本国語大辞典では、1972~76年の初版、2000~02年の第2版とも「原爆記念日」が主項目です。「原爆」の項目に含まれる「原爆の日」は「『げんばくきねんび(原爆記念日)』に同じ」とされています。

広島市のウェブサイトから過去の平和宣言を見てみると、47年に出された最初の平和宣言は「本日、歴史的な原子爆弾投下2周年の記念日を迎え……」と始まっています。現在では少なからぬ人から「原爆投下を祝っているみたいだ」と反感を受けそうな文ですが、そもそも「記念」にも「周年」にも祝うニュアンスはありませんでした。「原爆記念日」も自然な用語として使われてきたものと考えられます。

「原爆忌」について、文芸評論家の山本健吉は「震災忌」に倣った呼び方としています(山本健吉編著「最新俳句歳時記・夏」文芸春秋、1971年)。関東大震災が起きた9月1日は、今はもっぱら「防災の日」と呼ばれますが、かつては「震災記念日」が一般的でした。それを「震災忌」と呼ぶのと同様に「原爆忌」が使われるとのこと。かつては毎日新聞の紙面でも「原爆忌」は「原爆の日」よりも多く使われていました(89~98年は「原爆忌」207件、「原爆の日」26件。09年以降は「原爆忌」96件、「原爆の日」373件。東京本紙、記事本文に出た件数)。字数が少なく使い勝手が良かったのだろうと想像されますが、アンケートの結果にも明らかなように今は「原爆の日」が広く定着しています。記事もそれに合わせたものに変化してきたようです。

ところで、アンケートの回答から見られる解説では「原爆の日」および「原爆忌」を夏の季語としましたが、秋の季語に分類されることも多く、歳時記でも秋の部に収めているものが見られます。6日の広島忌が夏、9日の長崎忌が秋とする考え方もあるらしく、夏の季語と断定したのはミスリードだったかもしれません。ちなみに日本国語大辞典では「原爆忌」について、初版は秋の季語としていましたが、2版では夏の季語としています。改訂までの期間に夏の季語として扱われることが多くなった可能性はあります。

(2018年08月27日)

質問に際して

8月6日と9日は、それぞれ広島と長崎に原爆が落とされた日です。手元の歳時記は両日について「原爆忌」を見出しに取りつつ、「原爆記念日」「原爆の日」「広島忌」「長崎忌」「平和祭」も併記しています。立秋をまたぐころですが夏の季語です。「原爆忌子がかげろふに消えゆけり」(石原八束)。子どもが遊びに行く姿がかげろうの中に遠くなってゆく、夏の一日の情景でしょうか。あるいは、あの日の光と熱の中、消えていった子の姿でしょうか。

言葉としては「原爆記念日」が比較的古いもののようです。毎日新聞で確認できる初出は1949年。「広島で四度目の原爆記念日」という見出しが使われています。「原爆の日」は53年、「原爆忌」は69年にそれぞれ確認できます。毎日新聞では現在、見出しは「原爆の日」にそろえるという運用をしていますが、記事中では他の語も使われます。今では「忌日」という語にある「回向をする日」(大辞林3版)という意味合いも薄れており、「原爆忌」も広くなじんでいると思うのですが、いかがでしょうか。

(2018年08月27日)

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