3分の2が、「一矢を報いる」は負けた側についてのみ使う表現だと回答しました。例えば4戦先勝のプロ野球日本シリーズで3連敗の後に勝利しただけで「一矢報いた」と書くのは気が早いと感じる人が多いということでしょうか。

「一矢を報いる」という言葉の使い方について伺いました。

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「一矢を報いる」は負けた側が3分の2

勝負において「相手に一矢を報いた」といわれるのはどちら側?
勝った方 18.7%
負けた方 66.2%
両方ありうる 15.1%

 

3分の2が、「一矢を報いる」は負けた側についてのみ使う表現だと回答しました。単に反撃するという意味ではなく、「劣勢を覆せない程度の」反撃をする、という考え方で用いる方が多数派であるようです。

勝った側について使えると考えた方は、出題時の解説で述べたような、通算対戦成績で見た場合の「一矢」といったいろいろな場面を考えたのでしょうか。それとも単純に「逆襲して勝つ」といった意味で使うこともあるのでしょうか。

毎日新聞の過去記事での用例を眺めていくと、この言葉を使う際には、勝負をどのようなスパンで切り取っているかがポイントになると感じました。

まず分かりやすいものとしては、1-4で敗れた卓球の試合の「第4ゲームで一矢報いた」。一つの試合の経過において、相手に打撃を与えた部分についての表現です。

これが少し長期的な観点になると、例えば、人間とAIの囲碁の五番勝負はAIの4勝1敗だったという記事で「4戦目では人間が一矢報いた」。当該対局については人間が勝ったけれども5回戦う勝負のスパンで考えているために、これは敗者側への表現として当てはまります。プロ野球のペナントレースで前半戦が終わる際、低迷するチームが首位チームに勝利し「一矢報いた」というものもありましたが、前半戦全体を総括する文脈では妥当でしょう。

こうすると、今回「勝った方に使うか、負けた方に使うか」などとしたのは単純化しすぎたアンケートだったかもしれません。「勝ち」「負け」の枠組みをまず確定させることが必要なのでした。

ただ、例えば4戦先勝のプロ野球日本シリーズで3連敗の後に勝利しただけで「一矢報いた」と書くのは気が早いんじゃない? 結果的にこれは一矢にとどまらず逆転してしまう可能性があるよ、と感じる人は多そうだと今回のアンケート結果から言うことはできるかもしれません。先走って敗者を決めてしまったように受け取られる使い方ではないか注意したいと思いました。

(2018年08月03日)

質問に際して

6月に行われた卓球の荻村杯で、伊藤美誠選手がそれまで一度も勝てなかった中国選手を倒して優勝。それを「ライバルに一矢報いた」と表現した記事に、編集者から疑問が呈されました。

新明解国語辞典(7版)ではこの表現について「相手の猛攻に対し、こちらも及ばずながら反撃に出て、意地を見せる」と説明しています。他の辞書でも「大勢は変わらない程度の反撃」といった記述が見られます。今回のサッカー・ワールドカップのメキシコ-韓国戦の毎日新聞記事では、敗れた韓国のエース・孫興民が1点を返したことを「終了間際に強烈な左足シュートで一矢を報いた」と書いたのが典型的でしょう。

つまり、「一矢報いる」のは敗者側であり、勝利した伊藤選手について使うのは不適切ではないかというのが疑問の趣旨でした。しかし岩波国語辞典では単に「敵からの攻撃に対して矢を射返す。やりかえす」とあり、必ずしも負けた方についてしか使えないわけではないようです。今回の場合、通算対戦成績が伊藤選手の1勝6敗であることを踏まえて「一矢」という言い方もあり得なくはないようにも思えますが……。

(2018年07月16日)

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