「巻きを入れる」は過半数が「使わないし分からない」でした。どうもお役所言葉というのは日本語の敵ではないかと感じています。こういう内輪向けっぽい言葉を使う方が仕事をしているという気分になるのでしょうか。

「巻きを入れる」という言葉について伺いました。

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「巻きを入れる」は過半数が「使わないし分からない」

お役所のメモに出てきた「巻きを入れる」という言葉。使いますか?
使う 9%
使わないが、意味は分かる 36.2%
使わないし、意味も分からない 54.8%

 

「使う」という人が1割弱、過半数が「使わないし分からない」という結果になりました。

「フェーズ」のようなお役所の好きなカタカナ言葉を取り上げた際にも書きましたが、どうもお役所言葉というのは日本語の敵ではないかと感じています。そうした感覚も一般的なものだろう、と思わせてくれる結果だったと思います。

森友学園問題での財務省とのやりとりをまとめたという国土交通省の文書。それを取り上げた記事には、財務省側が「内部調査報告書の公表時期を大阪地検の刑事処分と合わせるため、『官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている』と現状を説明した」とありました。

米川明彦氏編の「集団語辞典」(東京堂出版、2000年)は「巻き」の項目の②として

《テレビ》番組撮影で主演者に進行を急がせる合図。人さし指を立ててくるくると回す。

と説明しています。「巻きを入れる」という用例は出ていませんが、意味としてはこの説明から目星がつくでしょう。要するに「早くしろ」と促すことです。

お役所は放送業界ではないのだから「急がせている」とか「急ぐよう指示している」と言えばいいだろうに、と思うのですが、こういう内輪向けっぽい言葉を使う方が仕事をしているという気分になるのでしょうか。

Googleのフレーズ検索で「巻きを入れる」を検索すると相当数がヒットするのですが、大半は「おせちに昆布巻きを入れる」のたぐいか、髪に「縦巻きを入れる」のようなもの。紙面に出てきたような例については、先ほどの文書を取り上げた記事以外、見ることができませんでした。今回のアンケートでは「使う」という人も1割弱ありましたが、ごく限られた場面での使用ではないかと推測されます。

お役所の皆さんには、自分たちの言葉遣いが独特であることを喜んでほしくはないものです。

(2018年07月13日)

質問に際して

先日の国会質問で野党の議員が示した、政府の内部文書に出てきた言葉。

毎日新聞の記事によると、この文書で財務省は国土交通省に対し「内部調査報告書の公表時期を大阪地検の刑事処分と合わせるため、『官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている』と現状を説明した」とのことです。

何か怪しげなことをしている気配がしますが、「巻きを入れる」という用語も怪しげです。テレビ局などで、撮影などの進行がスケジュールより早く進むこと、また遅れを取り戻すために進行を急がせることを「巻く」といいますから、「急がせる」というほどの意味と想像はできますが……。

記事は元のメモがあるものなので、原文の表記だとすると直しにくいと思いつつ読んでいたのですが、最終版向けの替え原稿で出稿部が「巻き(催促)を入れる」と説明を入れてきました。お役所の符丁めいた用語には積極的に説明を入れるべきかもしれません。

(2018年06月25日)

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