「圧倒的」は「すぐれている」という意味を含んだ言葉なので「圧倒的に弱い」は矛盾を含むものの3割が使うと回答。ネットで目につく「圧倒的」は「機動戦士ガンダム」の二つのセリフですが、どちらも適切な使い方でした。

「圧倒的」の使い方について伺いました。

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「圧倒的に弱い」3割が使うと回答

「圧倒的に弱い」「圧倒的に劣る」……マイナス評価でも「圧倒的」と使いますか?
使う 33%
使わない 67%

 

マイナス評価では「圧倒的」を使わないとした人がおよそ3分の2を占めましたが、この割合は圧倒的というほどではありません。マイナス面にも拡大して用いる人が増えていることを裏付ける結果になったと思います。

「圧倒的」は「他とはかけ離れてすぐれていること。他を全くしのいでいること」(広辞苑7版)のように、単に程度の甚だしさをいうだけではなく、「すぐれている」という意味を含んだ言葉です。従って「圧倒的に弱い」のような使い方は矛盾を含んだものとなります。

毎日新聞での使われ方を見てみると、文中に「圧倒的」が出てくる最近の記事50件(東京本紙)のうち、5件では「圧倒的に少ない」と書かれるなど不適切な形で使用されていました。1割というのはかなりの確率と言わねばなりません。校閲記者の間でも「圧倒的」を単なる強調表現と見なすようになっており、マイナス評価で使うことへの抵抗感が薄れているのかもしれません。

ここで筆者が不適切と見なした5件のうちには「ポスドク〔の研究者〕と終身雇用の上司とでは立場が圧倒的に違う」というものが含まれます。立場として上司の方が圧倒的だというのは理解できるのですが「圧倒的に違う」という言い回しには違和感がぬぐえません。単に程度の差を強調するなら「全く違う」とした方がよいですし、上司の優位さを言うなら「ポスドクに対し終身雇用の上司は圧倒的な立場にある」などとした方がよいところでした。

ところで、Googleで「圧倒的」を検索して目についたのが、アニメ「機動戦士ガンダム」に出てくるセリフです。主人公のアムロ・レイが敵方の兵器(ビグ・ザム)の破壊力に驚いて「圧倒的だ……」と漏らす場面が一つ。もう一つはその敵方の総帥、ギレンが自軍に対して「圧倒的じゃないか、我が軍は」とつぶやく場面。結局アムロは敵を破壊しましたし、ギレンの認識は錯覚だったかもしれませんが、「圧倒的」の使い方としてはどちらも適切なものでした。ガンダムバージョンの辞書が出るならば、例文に採用してほしいところです。

(2018年06月08日)

質問に際して

いわゆる「誤用」に厳しいと評判の明鏡国語辞典(2版)によれば、「圧倒的」は「比べものにならないほど、他をしのいでいるさま」であり、「能力や程度が他よりひどく劣ることをいうのは一般的でない」としています。

確かに「弱い」や「劣る」のようなマイナスの評価を受けるというのは、強い相手や優れた相手に「圧倒される」側だということです。「被圧倒的」のような言い回しがあればふさわしいのかもしれませんが、そのような言葉は無いようです。

ほかの事物と甚だしく程度が違う、という中立的な意味であれば「ずっと~」「はるかに~」などを使うのが適切でしょう。

もっとも、新聞においても過去記事を検索すると「圧倒的に弱い」などが散見されます。近年は形容詞に「圧倒的」を使う人が増えた、という声をツイッターでいただいたこともあり、使用実態について皆さんのご意見を伺ってみました。

(2018年05月21日)

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