悪の根は「絶つ」がやや優勢ですが、「断つ」も4割弱。明鏡国語辞典(2版)で「悪の根を断つ」「悪の根を絶つ」両方の用例を見つけたことがアンケートで意見を伺うきっかけでした。

「断つ」と「絶つ」との使い分けについて伺いました。

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悪の根を「絶つ」が優勢 辞書でも表記割れるが

悪事には原因から対策を。悪の根を「た」つ、どう書くのがよいでしょうか。
断つ 37.5%
絶つ 45.8%
意味により使い分ける 16.7%

 

「絶つ」がやや優勢ですが、「断つ」も4割弱と少なからぬ人が推しています。明鏡国語辞典(2版)で「悪の根を断つ」「悪の根を絶つ」両方の用例を見つけたことがアンケートで意見を伺うきっかけでした。


明鏡国語辞典2版より

しかし、辞書でも表記が割れるようなことでもあり、はっきり決着がつくような差にはなりませんでした。

ツイッターでは「根絶」という言葉から「絶つ」ではないかという声も。「根絶」は「根絶やし」に対応する漢語です。「絶やす」は辞書の説明に「絶えるようにする。絶つ」(大辞林3版)とあるように、「絶つ」と意味が相通じます。これを根拠に「根を絶つ」がよいと断定はできませんが、「絶つ」の方がしっくりきそうな印象を受けます。

毎日新聞用語集の「たつ」の項目には「禍根を絶つ」という用例が挙げられているので、毎日新聞では「根を絶つ」になるケースが多数を占めます。ただし、毎日以外の新聞社・通信社で「禍根を絶つ」を挙げているのは時事通信社だけで、業界内の多数意見というわけではありません。


毎日新聞用語集の「断つ」「絶つ」用例

使い分けに意味がある可能性もあります。文化審議会国語分科会の「『異字同訓』の漢字の使い分け例」では、「断つ」は「つながっていたものを切り離す。やめる」、「絶つ」は「続くはずのものを途中で切る。途絶える」としています。

「悪の根を~」の場合は植物の根を用いた比喩表現なので「断つ」でも分からなくはありません。木の根を刃物で断ち切るようなイメージでしょうか。思い切りの良さ、決断のようなニュアンスもうかがえます。ひるがえって「絶つ」であれば雑草を根から引っこ抜くような図を思い浮かべます。見えている部分だけではなく、根から退治するということ。しかし、そう考えると「悪の根をたつ」のような場合は「絶つ」の方が合っているという印象が強まります。

今回の質問に関しては、あまりはっきりした見方を示すことができないのですが、出題者の感触としては「~の根をたつ」という比喩表現では「絶つ」の方が良さそうです。辞書の記述は気になりますが、明鏡国語辞典の関係者の方がもし当欄をご覧になりましたなら、3版への改訂時には、いっそう練られた解説をお願いしたいところであります。

(2018年05月15日)

質問に際して

切る、途切れさせるといった意味合いの「たつ」については、さしあたり三つの書き方が考えられます。「断つ」「絶つ」「裁つ」ですが、このうち「裁つ」については迷うことが少ないのではないかと思います。「服地を裁つ」「裁ちばさみ」など、布や紙を切る場合に使われます。

問題は「断つ」と「絶つ」。この二つの使い分けには悩みます。たとえば「食をたつ」という場合には、漢語なら「断食」「絶食」と両様の書き方がありますし、「関係をたつ」という場合にも「断交」「絶交」ともにあり得ます。これらは事情に応じて使い分けるとして、「~の根をたつ」といった場合にはどうなるでしょうか。

辞書を引いてみたところ、明鏡国語辞典2版では、「たつ【断つ・絶つ】」の項目に「悪の根を絶つ」、「ね【根】」の項目に「悪の―を断つ」という用例が……。「どっちや!」とつっこみたくなるところですが、皆さんのご意見はどうかと伺ってみた次第です。

(2018年04月26日)

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