今年3回開かれた人気のイベント「国語辞典ナイト」。今回は“来年の新語”の発表から、「セトリ」「ガラホ」「ユーグレナ」も載っている三省堂現代新国語辞典、「悪書追放」「かみなり族」などがある角川国語辞典など新語をテーマに盛り上がりました。

 12月5日、東京・渋谷で人気イベント「国語辞典ナイト」の8回目が「『今年の新語2018』meets 国語辞典ナイト!」として開催されました。

 三省堂の辞書編集者が選ぶ「今年の新語」も興味深かったのですが、さまざまに報告されていますし、やはり筆者としては「国語辞典ナイト」の報告に力を入れたいと思います。2018年は1月の「広辞苑」を取り上げた第6回、校正・校閲がテーマとなった8月の第7回に続き3回目です。8月に登壇した筆者も今回は気楽で、1月に登壇した広辞苑編集者の平木靖成さんらと一緒に楽しむことができました。

 三省堂国語辞典編集委員の飯間浩明さん、フリーライターの西村まさゆきさんに、見坊行徳さん、稲川智樹さんの校閲ボーイ2人、司会の古賀及子さんといういつものメンバーに加え、今回のゲストは今年10月に発売された「三省堂現代新国語辞典」第6版の編集主幹、小野正弘さん。

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「来年の新語」 何がくるか?

 まずは、「今年の新語」に対抗し、西村さん、見坊さん、稲川さんの3人が選んだ「今年の新語2019もう決めちゃいました!」発表。2019……もう来年が終わってしまいます。

 2位までは以下。筆者にはわからない言葉ばかりで、紹介される度に9歳下の友人に教えを請うはめに……。

 「大賞」の「ナムい」もぴんときませんでした。“来年の新語”なので致し方ありませんが、ネット上では話題を呼んでいるそうで、選んだ稲川さんが下の写真のように辞書の語釈を書き、用例も拾っています。

 稲川さん、見坊さんが「来年『ナムい』が席巻します」と盛り上がるのに対し、飯間さんは「定着しないとだめです」と厳しいコメント。西村さんは「使い勝手がよくない?」と評価し、古賀さんが「『なめえな』にもなる」と発展させました。

新語で話題の「現新国」

 次に現代新国語辞典について飯間さんが解説。また凝ったスライドをつくって……山手線の「高輪ゲートウェイ」駅のニュースに着想を得たそうです。

 現代新国語辞典のもとは1988年の「三省堂現代国語辞典」で、「三省堂国語辞典」のいわば弟分として誕生したそうです。学習向けにということだったそうですが、「まえがき」には「小学校の高学年から、中学生・高校生、さらに一般社会人まで」とターゲットがどこかわからないものになっていました。

 98年に「新」がついて「現代新国語辞典」になった初版の「まえがき」は小学生がなくなっています。

 そして、小野さんが主幹になった5版では「わけても、高校生」と、高校生を対象にしていることが明確に打ち出されたのでした。

 なるほどなあと感心するのですが、こんなに「まえがき」を読み込む人がいるとは……。

 そして、2018年10月発売の6版は「最新の高校教科書を調査して大型辞典にも載っていない語句・語義まで採録」とうたっています。

 「言いも言ったり」と盛り上がるレギュラーメンバー。「圧壊」「陶炉」「最終兵器」など、「教科書に載っているのに辞書になかった言葉」が採録されただけでなく、「ポチる」「バズる」といったネット発の俗語が入っており、話題になっています。

 既存項目も、「カレーライス」の5版の語釈は「肉や野菜を油でいためて煮こみ、カレー粉を加えてどろっとさせたものを……」と「まずそう」(飯間さん)でしたが、6版で「……カレー粉やルウを加えてさらにとろとろになるまで煮詰めたものを……」とおいしそうになるなど、かなり手を入れているようです。

角川国語の「昭和の新語」

 次は西村さんのコーナーです。新語といえば……ということで、巻末にまとめて「新語」が載っているという「角川国語辞典」を紹介しました。69年の発売以来内容がほぼ変わっていないのだといいます。

 巻末には「悪書追放」「マイ・カー族」「ビューフォン」「アンコール・アワー」「かみなり族」……昭和感の強い「新語」が並んでいます。「番長グループ——非行少年のグループ。リーダーを番長と読むところから」に至っては、いくら昭和でも、辞書の項目として必要なのかと疑問に思いつつ笑ってしまいます。

 「ファクシミリ」の語釈には「マイクロウエーブによる新聞の遠隔電送装置。新聞1ページの紙型をそっくり遠隔地に電送して印刷する方法」と書かれていてまたびっくり。新聞限定で、しかも1ページをそっくり送って印刷できたのでしょうか?

 今も現代新国語辞典が「新語」で話題になるように、昭和の角川国語辞典も侮れない存在です。筆者の職場にあった「角川新国語辞典」を見ると、巻末にはやはり「新語・略語一覧」がありました。上記の語はいずれもなくなっていましたが、81年刊行だけに「ディジタル」(「デジタルとも」の注記あり)「カラオケ」「成人病」「窓際族」といったいかにも“昭和の新語”が並んでいました。また、「ハイジャック防止法」「環境アセスメント」といった当時の“時事用語”も多数挙げられていました。

現新国の見出し語にないのは?

 最後は国語辞典を使ったゲームです。今回は稲川さんの考えた「『三省堂現代新国語辞典』見出し語ドボンクイズ」。

 挙げられた25語のうち現代新国語辞典の見出し語になっている20語を当てるというもので、ほかの5語を答えてしまうと「ドボン」で脱落します。この辞書の編集主幹の小野さん、編集委員の飯間さんも参加し、どれだけ自分の辞書を把握しているかということが明白になってしまいます。

 この25語です。ネット用語のような新語や教科書にある言葉が採録されているというところがヒントであり、ひっかけでもありますね。皆さんはわかりますか?

 いきなり飯間さんが不正解で脱落。会場の人は何人か正答しましたが、編集主幹の小野さんも早々に外してしまいました。次々当てて最後に残ったのは西村さんと見坊さん。最後に西村さんが「ボコる」と言って外し、見坊さんの勝利となりました。

 結局、載っていない5語は「社会現象」「カピバラ」「ヘビロテ」「ニーハイ」「ボコる」でした。

 飯間さんが外したのは「社会現象」。「現象」の用例としては載っているものの見出し語にはなっていないそうです。飯間さんも、「カピバラ」で不正解だった小野さんも「三国(三省堂国語辞典)には載っているんだけど……」と言い訳しました。後で「社会現象くらい載せてもいいんじゃいですか」と問われた小野さんは「そうだね。でもカピバラが先だよね」と悔しそうでした。

辞書好きの祭典 来年もぜひ

 毎回、国語辞典ナイトでのゲームは自分たちでもやってみようと思いながら帰るのですが、このドボンクイズは難しそうです。何か一つ辞書を選んでみんなで当てっこすれば楽しそうなのですが、問題をつくるには、稲川さんのように、その辞書を「全部読んで」ほどでなくとも、かなり読み込まなければならないからです。ドボンクイズ、稲川さんにほかの辞書でも問題をつくっていただけたらなあと勝手ながら考えてしまいました。

 客同士の交流もありました。広辞苑の平木さんに、「辞書界」で有名な境田稔信さんが話しかけ、「広辞苑第1版は何刷りまで出ましたか」と質問しました。境田さんは辞書を自宅マンションに6000冊以上所蔵する驚異の辞書コレクターなのです。第1版は29刷りまでお持ちだそうで、もしその後もあるなら手に入れたいというわけです。更に1刷りしか見つからなかった第5版に2刷りが出ていたことも確認し、目を輝かせていました。

 毎回趣向を凝らして楽しませてくれる「国語辞典ナイト」、来年もきっと複数回開催されるでしょう。チケット入手困難な人気イベントですが、興味を持った方はぜひ参加してみてください。

【平山泉】

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