「ググる」という言葉が辞書に載るほどグーグルで検索する人が多くなりましたが、果たして校閲の調べ物にグーグルは向いているのでしょうか。最近調べた検索結果では目指す情報にすぐにたどり着けず、他社の方が速かったことをご報告します。

 

「ググる」という言葉が今年1月発行の「三省堂国語辞典」第8版に登場しました。「グーグル〔商標名〕など、インターネットの検索エンジンを使って、目的の情報を探す」という語釈です。ことほどさようにネット検索でグーグルを使う人は圧倒的に多いのですが、はたしてその検索結果は調べ物に向いているでしょうか。最近私が仕事で出合った事例をご報告します。引用した画面はすべて2022年4月9日の検索結果です。

日本「独立」の検索結果に仰天

日本が第二次世界大戦で戦った連合国との間で結んだサンフランシスコ講和条約。これが発効した日は日本が占領下からの独立を回復した日でもあります。この日付を調べようとして、たまげました。グーグルで「日本 独立 いつ」と検索すると、大きな文字でドーンとこの結果が表示されたのです(上の画像)。

紀元前660年2月11日

これは伝説上の神武天皇の即位とされる日です。「建国記念の日」のもとにもなっています。一瞬「皇国史観」の設定かとも思いましたが、よく見ると小さく「日本/設立」とも出てきます。つまりグーグルは「独立」と「設立」「建国」を同義語と認識してこの結果になったのでしょう。

このようにパソコンに画面で一番目立つように“誤答”が表示されるのは困ったものです。“正解”を表示させるためには、検索語の入力にちょっとした手間をかければいいことをご存じでしょうか。それは、“ ”という引用符を検索語につけることです。これで絞り込んでみると1952年のめざす日時が出てくるはず……と思いましたが、あらあら、結果は同じでした。

もちろん、ちょっと下に出てくるサイト、例えば「コトバンク」の「サンフランシスコ講和条約」を開けば、目指す情報「1952年4月28日」にたどり着けます。一番初めの表示を真に受けて「日本独立は紀元前660年! 1952年じゃない」と言い出す人がいるとは思えず、この件に関してはさほど問題にはならないかもしれません。

「女性の日」が出てこない

次に4月に「女性の日」というのがあるらしいのでグーグルで日付を調べてみましょう。

ずらりと並ぶのは3月8日の「国際女性デー」に関するサイトです。すると4月に「女性の日」とあるのは間違いでしょうか。いえ、「女性の日 4月」で検索すると、4月10日がその日であることが確認できます。

1946年のこの日、戦後第1回の衆議院議員選挙があり、女性が初めて参政権を行使して39人の女性国会議員が誕生しました。それにちなみ4月10日は「婦人の日」と定められたのですが、後に「女性の日」と改称しました。ただし、今とくに大々的なイベントがあるわけでもなく、国連が定めた国際女性デーの方がニュースなどで扱われることが圧倒的に多いようです。検索結果はその実態が表れているだけなのでしょうが、仮に4月にあるということも分からないとしたら「女性の日」だけで検索せざるを得ません。それでなかなかヒットしないというのはけっこうストレスになりますし、間違いのもとになるかもしれません。

「アンデルセン」はどこに?

もう一つ、デンマークの童話作家「アンデルセン」の生年月日を調べてみましょう。

一発で出てくると思いきや、長々と関係ないサイトが上位に並んでいます。

別の検索エンジンで調べると

ちなみに同じ検索エンジンであるマイクロソフトBing(ビング)で検索してみましょう。「日本 独立 いつ」で検索すると、サンフランシスコ条約発効に基づく欲しい情報が真っ先に得られるようになっています。

「女性の日」はどうでしょう。これは一番上ではありませんが、比較的楽に4月10日にあることが分かる記事が見つかります。

「アンデルセン」でのビングの検索結果は?

一番上に童話作家としての情報が出てきます。もちろん開くと生年月日も1805年4月2日と出てきます。

いろいろ試して最適な検索を

以上の3例はたまたま気になって比較しただけで、これだけをもってネットの調べ物はグーグルよりビングの方が使い勝手がよいと結論づけるつもりは全くありません。

ただし、国語辞典が編集方針の違いなどからそれぞれ個性があるように、検索エンジンにもそれぞれ一長一短ありそうだということがおぼろげながら分かってきました。特に新聞校閲は一分一秒を争う場面が多いだけに、検索をグーグルだけに頼ると無駄な時間が多くなるかもしれないと思ったのでした。

念のため言っておきますが、私はマイクロソフトの回し者ではありませんよ。他にも検索エンジンはありますので、いろいろ試して状況に合った検索エンジンを選んだ方がよいと思ったまでです。

【岩佐義樹】

9/30(金)19時~ オンラインイベントを開催

「記者時代、訂正・おわびにつながる間違いを校閲記者に助けられること数知れず」という毎日新聞人事本部の三木陽介・採用担当部長が司会を務め、校閲記者が舞台裏を語るオンラインイベントが9月30日(金)19:00〜20:30に開催されます。

チケットは一般1650円、学割550円。文章の校閲・構成に興味がある方から「毎日ことば」のファン、さらに、ことばそのものに興味がある方まで幅広くお楽しみいただける内容です。

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