「ヘイトスピーチ」は「卑劣きわまる言動」、「おやじギャグ」は「ひんしゅくを買う」――言葉の直接の意味に加え、一歩踏み込んで語の社会的な評価や背景を書くのが新明解国語辞典の特徴。編集者は「そこを無しにすると、言葉を描ききるというところまではいかない」。#新明国

三省堂辞書出版部の山本康一部長(左)と吉村三恵子さん

 

「おやじギャグ」は「ひんしゅくを買う」

――独特の語釈を楽しませてもらっています。今回の改訂でも特徴的な語釈はありますか。

山本さん 〝独特の語釈〟を追求しているわけではない、というのは申し上げているところですが、語が表すものをできるだけ描ききる、という意味で、その語に対する社会的な評価なんかもある種入れていかなければいけないというのはあります。

山本さん 例えば新語として今回採用した「おやじギャグ」で、「多くの場合かえってひんしゅくを買う」とか(笑い)。

第8版=三省堂提供、黄色の強調は引用者。以下同

 

山本さん「ヘイトスピーチ」が「社会の分断をはかる卑劣きわまる言動や活動」などです。

第8版

 

山本さん 普通の辞書ならもっとさらっと書くであろうところかもしれませんが、一言付け加わっています。

吉村さん 一歩踏み込む、と。

語の社会的な評価を含めて描ききる

――新明解国語辞典は怒ってる、などといわれるゆえんですね。

山本さん 語そのものの意味に加えて、その語が負っている社会的な評価や背景というものがどうしてもありますので、そこを無しにすると、その言葉を描ききるというところまではいかないと思うんです。

吉村さん なかなか難しいところでもあります。言葉の意味そのものではないこともあるわけですから。その語が示している意味と、その語が具体的に(使われて)現れたときっていうのかしら、そこにギャップがある場合はどうしても、それを書きたくなる。

 たとえば「公約」は「実行に必要な裏付けを伴わないことも多い」とか(笑い)。注記の形なので〝意味〟からは外れるのですが。

第8版

 

吉村さん それは言葉の意味ではないでしょう、ということもあるのだけれども 、そういう社会的な位置や、評価などを一言入れたくなっちゃうところはあります。

和らいできた?“強烈な個性”

――語の評価については、そう決めつけていいのか、慎重にならねばならないこともありますね。

吉村さん そうですね。そこは版を重ねるごとに、穏当な表現に書き換えるなどしています。一時話題になった、「不当に安い」とかですね。

 

【宿舎】②公務員などに、不当に安い家賃で提供される住宅。(初版・第2版)
 ↓
【宿舎】②公務員などに、名目だけの安い家賃で提供される住宅。(第3・第4版)
 ↓
【宿舎】②公務員などに安い家賃で提供される住宅。(第5版)

吉村さん ちょっと和らげたり、いろいろありました。「昔に比べて強烈な個性がなくなってきたぞ」とか言われることもありますけど。

【まとめ・塩川まりこ】

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