語彙、錦秋、憧憬、毀損、歯牙、俳諧、遡上、凄惨。先日発表された「国語に関する世論調査」で半数以上が「読みにくいので、振り仮名を付けるのが望ましい」と答えた言葉です。最高は「語彙」の60.9%。新聞がルビをつけることにしている漢字との関係はどうでしょうか。

 

2019年度「国語に関する世論調査」報告書より

 

今年も文化庁「国語に関する世論調査」の結果が発表されました。

各紙で大きく報道され、慣用句の使い方や意味の捉え方など興味深く読んでいました。

報道では気づかなかったのですが、文化庁国語調査官の方にいただいた報告書を読むと、2010年の常用漢字表改定で追加された漢字についての調査もありました。

10年の改定では一気に196字が追加され、それに伴い新聞も大幅に表記の見直しをしました。常用漢字表は「一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」ですから、新聞はよりどころにしています。

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しかし、文化審議会は「読めるかどうか」の調査をせずに追加の漢字を示していたので、そのまま読者が「読める字」として扱ってよいものかと悩んだのです。毎日新聞など全国の新聞・通信・放送各社が加盟する日本新聞協会の用語懇談会では、各社の独自調査を持ち寄り、検討を重ねました。その結果をもとに、毎日新聞でも常用漢字表にあっても仮名書きにする漢字、使う場合は読み仮名を付ける漢字などを決めました。

あれから10年。実際に紙面で使っている漢字を読者が読めているのか、わかりやすく書けているのか、大いに気になるところです。

国語に関する世論調査では、追加された漢字のうち30字について、28の熟語にして短文で示し、「漢字を使うことで、意味の把握が容易になる」「読みにくいので、振り仮名を付けるのが望ましい」「読みにくいので、仮名書きが望ましい」「分からない」の四つの選択肢から選ぶという方法がとられました。「読めるかどうか」ではありませんが、新聞の表記の参考になると思います。

「振り仮名を付けるのが望ましい」の割合は「語彙(ごい)」が最も高い60.9%で、最も低いのは「破綻(はたん)」でした。毎日新聞では、語彙は読み仮名付き、破綻はそのまま使えることにしているのでほっとしました。

〈例文中の追加された漢字(太字)を含む熟語について、「振り仮名をつけるのが望ましい」と回答した割合。右端は毎日新聞でルビ付きで使っているかルビなしで使っているかの別〉

彼は驚くほど語が豊富だ 60.9% ルビ付き
秋の京都を訪ねる 57.4% ルビなし
西欧文明への憧憬 55.4% ルビ付き
名誉を損する 54.0% ルビ付き
にも掛けない 53.2% ルビなし
の研究を続ける 51.3% ルビなし
サケが急流を上する 50.8% ルビ付き
惨な光景に立ち尽くす 50.2% ルビ付き
前方に見える客船 49.9% ルビなし
密な調査を行う 48.2% ルビなし
事実を隠する 48.1% ルビ付き
赤字を補する 44.4% ルビ付き
用性の高い機械 44.0% ルビ付き
有の大事件 43.7% ルビなし
道路工事の進状況 42.7% ルビ付き
望の的となる 42.6% ルビ付き
に広がる牧場 38.8% ルビ付き
人形浄瑠璃の上演 37.6% ルビなし
気持ちが縮する 37.5% ルビなし
な気分が続く 37.3% ルビなし
氏名を書で書く 37.2% ルビなし
を受け取る 36.6% ルビなし
無用な索はしない 36.5% ルビなし
不安が払できない 36.1% ルビ付き
決戦の火を切る 35.3% ルビ付き
彼の将来を危する 35.2% ルビなし
5年の判決 34.7% ルビなし
経営が破する 29.3% ルビなし

 

ルビ付きで使っているが「付けるのが望ましい」割合の低いもの、ルビなしで使っているが「付けるのが望ましい」割合の高いものもありました。

調査は短文の中の熟語で示しており、別の文や語の中では印象が変わる可能性もあるので、単純にそのまま受け取るわけにはいきませんが、この調査も参考にして新聞表記を見直していけたらと思います。

【平山泉】

 

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