「うふふ」「ゆべし」は岩波国語辞典8版の新規項目の一部。載っている辞書はほかにもありますが、見直された多くの項目とともに工夫の跡がうかがえます。担当者に聞いていたポイントが実際にどうなったのか、改めて見てみました。 #岩国8



 岩波国語辞典第8版が2019年11月22日に発売されました。刊行前、岩波書店の担当編集者のお二方にお話を伺っていたので、8版の記述がどうなっているのか早く見たい!とわくわくしていました。

 話に聞いていた項目がどうなったのか、まとめて見てみました。

「うふふ」ってどんな笑い?

新規項目の一つに「うふふ」があります。この笑い声、ほかにも載っている辞書はありますが、「うれしさがこらえきれずに思わず出る」とまで書かれたものはないのではないでしょうか。

岩国8版

 

8版の編者の一人、柏野和佳子さんが日常会話を意識しながら「声系」の言葉を見直していったそうです。ほかにも「声系」の言葉を探してどんな語釈になっているか見てみようと思います。

「ゆべし」ってどんなもの?

お菓子の「ゆべし」も新しい項目の一つ。食べたことはあっても、「ゆべしってどんなもの?」と聞かれてすぐ答えられますか。

甘くて餅より少しかたいくらいで……ユズの香りがしたりクルミが入っていたり……地方によってさまざまだそうで、「こう作られていれば、ゆべし」のように言える条件が見つけにくいのです。

岩国8版

 

編者の一人の星野和子さんが料理に詳しく、今回の改訂では料理用語も総ざらいしたそうです。「ゆべし」はこうなりました! ここでも「▽注記」が効いていますね。

「ゲーム」一言で言えば?

見直された語釈の一つが「ゲーム」。

編集者の赤峯裕子さんによると「ゲームには、試合、遊び、テニスの1ゲーム、2ゲームもあるし、コンピューターゲームの『ゲーム』はどう書けばいいか……」と悩んだそうです。コンピューターゲームは「試合」ではないが、試合のようなところもあって、遊びといえば遊びだが――と。そして「遊びは遊びでも、ゲームには『ルール』がある。それに、『勝ち負け』はつくのだろう」と考えたそうです。

そうして8版の語釈はこのようになったのですね。詳しくなったというだけでなく、「(ルールのある)」というかっこ書きが効いていると思います。

遊びからスポーツへ

スポーツの言葉を見直した一つが「サーフィン」。7版で「遊び」としてしか書かれていなかったのですが、今や五輪の正式競技です。

はっきり「スポーツ」になり、関連する用語も追加されました。

また、「eスポーツ」も入りました。

岩国8版

 

意味広がった「泥臭い」

直接スポーツの言葉というわけではありませんが、「泥臭い」の語釈を見直したそうです。

「泥臭いプレー」や「泥臭く営業をしろ」などと使われるようになっていますが、それを「地道」「体を張る」という言葉で説明しているのですね。

介護用語の「移乗」

また、介護にまつわる言葉を入れていったそうですが、それは「移乗」という言葉が介護に使われていることに気づいたことからだったそうです。

「移乗攻撃」は海賊が襲う船に乗り移るようなことを言うそうですが、今では見かけませんね。

意味合い違う「好奇」と「好奇心」

「好奇心」の「好奇」は、「好奇」単独で使うときと意味合いが異なるということで、項目を立てたそうです。「幻想的」も同様で、確かにそれぞれに語釈があるほうがよさそうです。

なかった「近場」

これまでは「近間」が載っていて「近場」が載っていませんでした。

完成直前に入ったとのことです。間に合ってよかった……と思うのはわたくしだけでしょうか。職場のある先輩は「近間」の方を使うと言っていましたが。

 

 編集者のお二人はとても楽しく話してくださったのですが、こうしてほんの一部を見比べるだけでも、辞書づくりとは、なんと地道で(「泥臭い」!)気の遠くなるような仕事なのだろうと感じます。さらに使いやすくなった岩波国語辞典を校閲としてこれからも役立てていきたいと思います。

【平山泉】

「誤用」の変化

古くなった言葉遣いの修正

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