「『スマホ』などの語も商標登録されているそうだが、言い換えなければならないのか」との質問をいただきました。単に登録があれば使えなくなるわけではなく、どういう用途の商標かがポイント。例えば荷造りなどに使う「ガムテープ」は使用可能です。

 

 読者から以下の内容の質問が寄せられました。

ネットの記事によるとイケメン、コスプレ、女子高生、スマホ、美少女、美女、フリーマーケット、変身、万歩計、メディアはすべて登録商標とのことですが、例えば、文中に「スマホ」が出てきた場合、「スマートフォン」と直すべきなのでしょうか。「フリーマーケット」は「蚤の市」としなければならないのでしょうか。

「万歩計」は「歩数計」に

 結論からお答えします。ご質問で挙げられた商標のうち、毎日新聞で言い換えることを決めているのは「万歩計」だけです。万歩計は山佐時計計器の登録した商標ですので、普通名詞である「歩数計」に直しています。

「歩数計」機能付きスマートウオッチ

 

 新聞などマスコミは、商標とされる語を一般的な呼称であるかのように報じることは避けています。もちろん、商品の発売や売れ行きのニュース、あるいは特定の商品の不具合や回収など、その商標そのものがニュースである場合は言い換えずに報道します。そうではなく、その商品名だけではなく他社の商品名と置き換えても成立するような一般的用法として使う場合の話です。

 なぜ避けるかというと、おわかりかと思いますが、特定の会社に肩入れしているとみなされるのを避けるためです。また、例えば「万歩計」と書いたのは実は類似商品だった場合、事実誤認であるばかりでなく多大な迷惑をかけてしまいます。

使っていい「ガムテープ」

 商標かそうでないかを調べるには、独立行政法人・工業所有権情報・研修館によるJ-Platpatというウェブサイトで検索するのが一番です。

 しかし、単に検索にひっかかるからといって、その言葉そのものが使えなくなるわけではありません。それぞれの商標がどういう用途として用いられるかによって、その商標名は一般語として用いてもよいと判断できるのです。

 例えば、「毎日新聞用語集」では以前「ガムテープ」は「粘着テープ」に言い換えるよう規定されていました。商標検索でも確かにヒットします。しかし出てきたページの最後を見ると、こうあります。

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】コーヒー及びココア、茶、調味料、香辛料、穀物の加工品、菓子及びパン、アイスクリームのもと、シャーベットのもと

毎日新聞用語集「特定商品名の言い換え」より

 

 私たちが普段使っている、梱包(こんぽう)用の粘着テープとしては登録されていません。つまり粘着テープのこととして「ガムテープ」が一般的に使えるとみなせると判断し、今は毎日新聞用語集でも「使用可」としています。

ポイントは「商品及び役務の区分」

 ご質問の「スマホ」を検索すると、スマホの3文字だけで登録している会社は日本健康科学研究センターと五洲薬品で、「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」はそれぞれ「スキンクリーム及びスキンローション」「せっけん類、香料」となっています。スマートフォンとは全く違う商品ですから、スマホをスマートフォンの略称として用いることは何の問題もありません。なお携帯電話事業者も、例えば「スマホ診断」(NTTドコモ)などの名称を商標にしていますが、単なるスマホという言葉そのものの使用が認められないわけではありません。

「スマホ」

 

 「メディア」で検索すると、いろいろ出てきますが「MEDIA」は花王の「せっけん類,化粧品,香料,薫料,つけづめ,つけまつげ」としての特定商品名です。また株式会社メディアが「映写フィルム、スライドフィルム、録画済みビデオディスク及びビデオテープ」など非常に多くの用途として登録済みですが、いずれも私たちがイメージするマスメディアなど情報関連の言葉とは違うものです。ですから一般語としての「メディア」は使用可です。

 「女子高生」も同様。伊藤ハムが「肉製品、加工野菜及び加工果実、カレー・シチュー又はスープのもと」「べんとう、ぎょうざ、しゅうまい、ピザ、ミートパイ、菓子及びパン」などとして登録した商標ですので、一般名詞である女子高校生を女子高生と表現しても全く商標と関係ありません。

注意を要するケースは?

 「フリーマーケット」はどうでしょうか。検索すると、その名も株式会社フリーマーケット社が「写真の撮影、デザインの考案、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリ―ン印刷、石版印刷、凸版印刷」の用途として登録しています。ですから、「のみの市」と同義の一般語として「フリーマーケット」の語を使用することが妨げられるわけではありません。

 しかし、「フリーマーケット」の語を含む商標の一覧を見ると「マンモス/フリーマーケット」というのがあります。テレビ愛知の「のみの市の企画・運営又は開催」として登録されています。つまり「フリーマーケット」は一般名詞として使用可ですが、規模の巨大なフリーマーケットを一般語として「マンモスフリーマーケット」と称すると、商標権者から異議申し立てが出る可能性があるのです。

「フリーマーケット」

 

 そして「フリーマーケットガイド」という商標名も登録されています。「雑誌、新聞」として認められていますから、「フリーマーケットガイド」という名の雑誌、新聞は商標権者以外不可ということになります。しかしそういう名の雑誌、新聞そのものではなく、例えば毎日新聞の一記事として「フリーマーケットガイド」という題字でお知らせ欄を作るのも駄目なのでしょうか。そもそも一般語を重ねただけの語がなぜ商標として認められたのかもよくわかりません。ただ、現実に「フリーマーケットガイド」という雑誌が存在する以上、その名称は避けた方が賢明でしょう。

 ちなみに「フリマガイド」「毎日フリマ」「フリマ出品」も登録済み。「フリマ」だけでも個人の名前で出願されていますが、今のところ「係属・出願・審査待ち」とされています。少なくとも単なるフリーマーケットの略としての登録は認められないでしょう。

タバスコも特定商品名。一般名は「ペッパーソース」

 

 まとめるとこうです。「万歩計」「ウォシュレット」などの商標を一般語のように扱って公の場で書くことは避けなければならないのですが、商標検索でヒットするからといって単純にその言葉が使えなくなるとは限りません。用途を調べて判断することが必須です。

【岩佐義樹】

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