毎日新聞では紙面で使う書体を社内で制作しています。校閲とも関わりが深い「フォント制作室」を訪問し、現在のフォントの仕事と、かつての活字づくりについて聞きました。

 

約1万5000字、20種類以上を管理

 毎日新聞社には、紙面などで使用する文字フォントを制作しているフォント部門があります。

 先日、そのフォント制作室にお邪魔してきました。

説明してくれたフォント制作室の中林透さん(右)と吉田千恵さん

 

 こちらでは、紙面で使用するフォントを作成・管理しているほか、地方紙など社外向けにもフォントを作っているそうです。

 現在約1万5000字を管理しています。フォントメーカーを通じて、一般向けにも販売しているものもあります。

 紙面で使う書体は大きく分けてゴシック体・明朝体の2種類です。それぞれに新聞特有の扁平したもの、横組み用、見出し用など、さまざまなデザインがあります。用途に合わせて20種類以上のフォントを使い分けます。

過去の原図をまとめた資料

 

 2007年12月、毎日新聞は紙面の本文で使用する字を大きくしました。この際、フォント制作室はすべての文字をチェックし、デザインし直したそうです。機械的に拡大することも技術的にはできるのですが、文字の線と線の接点などが潰れてしまったりするため、美しい文字のためには人間の目によるチェック・修整が必要なのです。

 

 これからは新しい書体の開発にも取り組みたいと考えているそうです。

新書体の試作品

 

手間がかかっていた活字時代

 フォント制作室は活字時代からの伝統ある職場です。現在は数人の担当者がパソコンに囲まれて作業していますが、昭和30年代ごろは現在より大きな部屋で10人以上が作業していました。

 当時の映像が残っているということで、見せていただきました(小塚昌彦「母型の出来るまで」1957年。下のモノクロ写真は同映像から)。

母型の基になる文字原図の制作

 

 手で原図を描く様子や母型彫刻機、活字鋳造機を使った作業が映っていました。原図は母型を作るために必要です。母型とは活字を鋳込むための鋳型のことです。

面相筆で墨入れ

 

 すべてがコンピューター上で完結する現代とは違って、手間も人数もはるかに多く必要な作業だったようです。

母型彫刻機での作業

 

 そういったコンピューターのない時代に作られた書体には、字によってトメやハネの形や点の向きなど、微妙なスタイルの違いが残っているものも少なくないそうで、現在は、それらのスタイルを統一していく作業も行っています。〔毎日新聞の書体の特徴はこちらで詳しく説明しています〕

会社の窓から。撮影された1957(昭和32)年は、本社が有楽町にあった。動画には伝書鳩も

 

文字を通じ校閲とも深い関係

 フォント制作室は字体に敏感であらねばならない校閲と関わりの深い部署です。

 毎日フォントに含まれる全ての文字とユニコードの番号を調べられるように、共同でコード表を作成しました。

コード表には直す機会の多い異体字をまとめたページも(クリックで拡大)

 

 2010年の常用漢字改定の際には、「叱」「稽」「惧」など、それまで紙面で使用していたものと違う字形になったものがあり、校閲からフォント制作室に依頼して変更してもらいました。また、現在毎日新聞の横書きではリーダー(「…」のこと)が4点ですが、世間に合わせて3点に変更予定です。

母型と呼ばれる活字の鋳型

 

 「毎日ことば」では、フォント制作室の社員によるコラムなども掲載していきたいと考えています。ご期待ください。

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