しばしば見かけるのが「……にも関わらず」。「かかわる」は多くの場合「関わる」などと書けますが、逆接の連語「にもかかわらず」は漢字では「にも拘わらず」と書き(新聞はひらがな)、「関わらず」とは書きません。

 

 

かかわる (係わる、拘わる)
→ 関わる

(注)逆接の意味の「…にもかかわらず」は仮名書き。「天候に関わらず実施」などは漢字書きでよい

 

以下、詳しく説明します。

多くの辞書が「にも拘(わ)らず」として立項

そもそも、意外かもしれませんが「関」という字に「かかわる」という読み方が認められたのは割と最近なのです。あくまでも常用漢字表での話ですが、2010年まで「関」には音読み「カン」と訓読み「せき」という音訓しか掲げられていませんでした。だから、常用漢字表を表記のよりどころとする新聞では「かかわる」と平仮名表記にしていました。校閲では毎日のように「関わる」に赤字直しを入れていました。

それが2010年11月の常用漢字表改定で「関」に「かかわる」が加わり、晴れて「関わる」が使えるようになったのです。

それはいいのですが、では逆接の「にもかかわらず」はどうするという問題が発生しました。新聞社、通信社、放送各社が加盟する日本新聞協会の下部組織、新聞用語懇談会で議論し、仮名書きと決まりました。

根拠としては、多くの辞書は「かかわる」とは別に「かかわらず」「にもかかわらず」を立項し、漢字も前者が【関わる・係わる・拘わる】、後者が【拘わらず】【にも拘らず】と別の表記になっていることが挙げられます。

明鏡2版「にもかかわらず」

 

後者はいずれも「かかわる」から来た語ではありますが、独立した語として扱われているようです。その違いが漢字にも表れ「拘わらず」だけが掲げられていると思われます。

漢字は「拘」が適切だが平仮名がベター

実際の用例をインターネット電子図書館「青空文庫」で調べると、「にも拘わらず」「にも拘らず」は「にも関わらず」「にも関らず」を圧倒しています。「不拘」で「かかわらず」と読ませている例もあり、「拘」が伝統的な漢字であることは間違いありません。

とはいえ「関」は「拘」より数は少ないものの、夏目漱石の昔から使われています。例えば1907(明治40)年の漱石の講演録「文芸の哲学的基礎」の序文に「速記の体裁を具うるにも関わらず」とあります。

明鏡国語辞典(2版)の「かかわらず」の項でも【拘わらず・関わらず・係わらず】の三つの表記を掲げた上で「伝統的には『拘』。「関」「係」も使われてきたが、今後は常用漢字表内訓の『関』が増えるだろう」と注記しています。

明鏡2版「かかわらず」

 

こうしてみると「にも関わらず」は全くの誤字とはいえないようです。ただし「にも拘わらず」の方が漢字としてはより適切、とはいえそうです。

円満字二郎さんの「漢字ときあかし辞典」によると、「拘」は同じ訓読みの「関」に比べ「離れがたい」というニュアンスがあるのが異なるところ。そこから「拘わらず」という形で「制約があってもかまわずに」という意味を持たせることが多いということです。

例えば「家族の反対にもかかわらず」というのは、単に「家族の反対に関係なく」というニュアンスというよりは、「家族の反対に拘束力を感じるけれど、あえてそれをはねのける」という反発のエネルギーが感じられます。ですから漢字なら「反対にも拘わらず」が適切なのです。

もっとも、常用漢字表の「拘」に「かかわる」の訓はありません。したがって、常用漢字表を尊重する立場では「にもかかわらず」と平仮名書きにするのがベストということになります。常用漢字表にこだわらない場合でも「拘わる」は「こだわる」とも読めてしまうため、平仮名がベターといえます。

「天候にかかわらず」は「関わらず」でよい

なお、「天候にかかわらず投票に行く」という場合はどうでしょう。これは「晴れようが雨になろうが関係なく行く」という意味合いですので、逆接の意味とは違うと思われます。ですから「関係」の「関」の字を使ってよいと毎日新聞では判断しました。

ただし「にもかかわらず」と「にかかわらず」、つまり「も」の有無で本質的な違いが生じるかどうかは議論の余地があるかもしれません。明鏡国語辞典の予想のように、今後はいずれの場合も「関わらず」とする方向が強くなっていく可能性もあります。

しかしその明鏡も「にもかかわらず」は「拘」しか挙げていないし、三省堂国語辞典は新しい用法や表記を積極的に採用する特色があるにもかかわらず、最新の第7版でも「にも拘らず」の表記を掲げていました。

三省堂国語辞典7版「にもかかわらず」

 

やはり現状では、逆接の意味での「にも関わらず」はおすすめできないと強調しておきます。

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