魚のタイを使ったお茶漬けを「タイ茶漬け」と表記した紙面を見たある読者が、タイの国のお茶漬けかと思い、どんなものかと思ったそうです。なぜ「鯛茶漬け」としないのですか、というご質問をいただきました。こう思われる読者の方は多いと思いますので、このブログでも簡単に理由を説明しておきましょう。


端的に言うと、「鯛」という漢字を使わないことにしているからです。新聞紙面では使える漢字に制限を設けています。国で定めた常用漢字をもとに、新聞業界(具体的には日本新聞協会という業界の団体が代表しています)での合意事項を加味し、新聞各社独自に少し手直しをした範囲で書き表すことにしています。

現在、毎日新聞では、常用漢字2136字、新聞協会で使用を決めた5字、毎日新聞が独自に使用を決めた3字の計2144字から、新聞協会で使わないことにした7字を引いた2137字の範囲で書き表すことを原則にしています。人名・地名などの固有名詞を除く一般の言葉でこの範囲外の漢字が登場した場合は、平仮名や片仮名で書いたり他の表現を工夫したりしています。タイについては、紙面製作の原則を定めた毎日新聞用語集に「動植物名は原則として片仮名で書く」という決めごとがありますので、特段のことがなければ「タイ」という片仮名の表記にすることになります。

毎日新聞用語集の「使用する漢字」を示したページの一部

明治以来、日本語の表記は、漢字そのものの膨大な数と、その微細な字体の種類に悩まされ、コミュニケーションの壁になる場面がありました。それが教育に与える負担なども考慮し、戦前から使う漢字の範囲を限って表記するよう工夫を重ねてきました。新聞・出版などの活字を使ったメディアは、多かれ少なかれこのような措置を取っています。

漢字の知識がある方にとっては、じれったく感じられるかもしれません。しかし、新聞は不特定多数の読者を対象としています。なるべく多くの読者に正確に伝わるようにするには、漢字の制限もやむを得ないだろうと考えています。

魚偏の漢字については、混同されることが多いのと、違和感はあっても仮名で書いて通じる場面が多いため、常用漢字に取られているものはごく少数となっています。

【松居秀記】

 

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