2020年は当ブログの「#ことばの質問」も、新型コロナウイルスに振り回された一年でした。年末に当たって今年の質問を振り返ります。まずは「コロナ編」とでもいうべきものから。

2020年も押し詰まってまいりました。皆さまには本年も「ことばの質問」にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。今年のアンケートを振り返り、一年の締めくくりとさせていただこうと思います。

コロナに振り回された2020年

端的に言って、今年はひたすら新型コロナウイルスに振り回された一年でした。この「ことばの質問」では104件の質問をしましたが、そのうち15件がコロナに関連する質問。その最初の一つが何だったかというと――

「トレペ」はいったい何のこと?
トイレットペーパーのこと 12.1%
トレーシングペーパーのこと 72%
上のいずれも指す 5.9%
何のことか分からない 10%

 

3月5日からの質問で、トイレットペーパーの品薄状態に関連したものでした。毎日新聞のニュースサイトで「トイレットペーパー」を「トレペ」と省略して見出しにしていたため、この略語から何を受け止めるかを聞いてみた次第です。回答は「トレーシングペーパー」が圧倒的で、略し方としては不適切という結論になります。

しかし今となっては、トイレットペーパー騒動も「あれは何だったのか」と感じないわけにはいきません。当時トイレットペーパーを買い集めていた人は、そろそろ使い切った頃でしょうか。

見慣れない用法の誕生

新型コロナに関しては、見慣れない言葉の用法に触れる機会が増えました。典型的な言葉の一つが「クラスター」でしょう。

「クラスター」という言葉には慣れましたか?
以前から慣れている 23.1%
「集団」の意味として分かるし、慣れた 27.6%
「集団」の意味として分かるが、慣れない 34.4%
慣れないし、意味が分からない 14.9%

 

「クラスター」は元々はブドウや花の房のような塊を指す言葉です。親爆弾が子爆弾をばらまく兵器「クラスター爆弾」は「集束爆弾」とも書かれますが、小さな爆弾の集まりであることを示す名称です。また近年では「同種の傾向を持つ集団。グループ」(大辞林4版)として使われることもあり、この質問でも「集団」として扱っています。しかしコロナの影響で、今ではもっぱら「感染者集団」を指す、狭い用法で使われる言葉になっています。

1987年以降の毎日新聞(東京本社版、地域面除く)で「クラスター」という言葉を使っている記事は1562件。そして、うち549件が2020年の用例というのは驚異的です。コロナの流行が続いている間は「感染者集団」以外の意味で「クラスター」を使うのは難しくなったと言えそうです。上の質問も、今伺ったなら、事の善しあしは別として「慣れた」という人が大半になるのではないかと思います。

「しゅうそく」が待たれるが…

コロナ禍はいつ収まるのか。3月の段階で既に下のようなことを伺っていましたが、今思えば事態はそんなに甘くありませんでした。

新型ウイルス流行の「しゅうそく」を目指す――漢字ならどう書きますか?
収束 36.9%
終息 29.6%
場合により上の二つを使い分ける 33.5%

 

「しゅうそく」という音は同じですが「収束」と「終息」は別の言葉で、事態に収まりがついて制御可能になることを「収束」、事態がすっかりやむことを「終息」とする使い分けが考えられます。春の時点では終息を使うという人も3割程度ありましたが、現在の第3波のただ中では「終息」を見る機会はめっきり減った感があります。収束も遠い現状では、致し方ないというほかありません。

他にも▽マスクを「つける」は「付ける」か「着ける」か▽ウイルスとの「たたかい」は「戦い」か「闘い」か▽外出を「自粛させる」という言い方をどう感じるか▽「コロナ渦」という表記は“あり”か――など、コロナにまつわる質問をさせてもらいました。ワクチンの接種が進めば、こうしたことも全て一過性のこととして忘れていくことになるのでしょうか。

 ◇
2020年の振り返りは31日に続きます。

 

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