終止形「しなる」、未然形「しならせる」の組み合わせが8割超と大多数を占めました。国語辞典で主項目として扱われているのはワ行五段活用の「しなう」の方ですが、現在は「しなる」としてラ行活用の言葉と受け止められているようです。

しなやかに曲がる様子を表すのに「しなう」と「しなる」のどちらを使うか伺いました。

大多数が「しなる/しならせる」を選ぶ

しなやかに曲がる様子。「釣りざおが~/釣りざおを~」それぞれどう言いますか?
「しなう/しなわせる」を使う 6%
「しなる/しならせる」を使う 83.1%
「しなう/しならせる」を使う 5.4%
「しなる/しなわせる」を使う 5.5%

 

終止形「しなる」、未然形「しならせる」の組み合わせが8割超と大多数を占めました。元々はワ行五段活用の言葉だった「しなう」ですが、現在は「しなる」としてラ行で活用する言葉と受け止められているようです。

旧来は「しなう」が標準的

これほどに差が付きましたが、国語辞典で主項目として扱われているのは「しなう」の方です。「しなる」も見出し語に挙げている辞書は多いのですが、回答から見られる解説でも述べたように「『しなう』に同じ」とするものが大半です。「しなる」を見出し語に挙げていない辞書も少数ですが存在しており、辞書の記述と実際の言葉の使い方にギャップが生じているようにも見えます。

たとえば剣道の「竹刀(しない)」が「『撓竹(しないだけ)』の意」(日本国語大辞典2版)とされるように、元々の言葉はやはり「しなう」です(「しなる」が使われていたなら「しなりだけ」から「しなり」になっていたことでしょう)。ウェブ上の図書館、青空文庫で検索しても往時の小説は「しなう」を使っています。「枝をしなわせた橙(だいだい)の実の触れあう青さが、梶の疲労を吸いとるようであった」(横光利一「微笑」)のような感じです。

どうして「しなる」が主流になったのか

しかし、回答からの解説でも紹介したように、毎日新聞の過去記事でも、特に未然形の場合には「しならせる」が「しなわせる」を圧倒しています。なぜ今では「しなる」の方が普通に感じられるのか。新明解国語辞典7版は、「しなる」の項目で「〔東北方言〕しなう」としています。「しなる」は東北方言が広まったというのでしょうか。

地域性があると考えられる似たような表現には、ご飯を取り分ける意味の「よそう」と「よそる」があります。篠崎晃一・東京女子大教授と毎日新聞社による「出身地がわかる!気づかない方言」(毎日新聞社)によると、東京を除く関東を中心に「よそる」がよく使われるとのこと。同書は「よそる」について、「よそう」と「盛る」(北海道・東北に多いとされる)が合体してできた言葉だろう、としています。

「しなう」「しなる」の場合はちょうど良く混交するような言葉が見当たらず、方言が広まったという証拠も見つけることはできませんでした。ただし、「る」という語尾はもともと、別語に付いて動詞を作る働きの強いものです。やや古い言葉としては「愚痴る」や「駄弁(だべ)る」のようなもの、最近では「バズる」「ググる」のような例が見られます。「てかてか」のような擬態語から「てかる」という動詞が生まれる場合もあり、「しなやか」あるいは「しなしな」という語から「しなる」という動詞が導かれるのは、たとえ「しなう」という動詞が既に存在するとしても、自然な成り行きなのかもしれません。

確たる地位を得た「しなる」

さらに「しなう」と「しなる」は、連用形「しなっ(て)」のように語尾が音便化して、活用形が一致することがあります。そうした形から逆に終止形を考えた場合に、より頻繁に使われる「る」という活用語尾から引っ張られて、「しなる」という形が導かれたのかもしれません。

「しなう」から「しなる」への移行について、あまりはっきりしたことは言えないのですが、現状としては「しなる」を使う人が圧倒的に多いということは今回のアンケートからもうかがえます。「しなる」が多くの辞書に地位を占めていることから見ても、強いて「しなう」「しなわせる」といった形に直す必要はなく、「しなる」「しならせる」も使用実態に即した、問題のない日本語と考えるべきでしょう。

(2019年11月19日)



質問に際して

いずれの形も間違いではなく、「しなう」「しなる」ともに物がしなやかに曲がる様子についていいますが、多くの国語辞典で説明文がついているのは「しなう」のほう。「しなる」の項目は「『しなう』に同じ」(広辞苑7版)のように書いているものが多数派です。集英社国語辞典(3版)や岩波国語辞典(7新版)のようにそもそも「しなる」の項目がない辞書も。NHKの「ことばのハンドブック」(2版)は「しなる」の項目で「『しなう』が標準的な言い方」としており、「しなる」は特定の場合を除いては使わないように案内しています。

ということは「しなう」が本筋なのだろうから「しなう/しなわせる」を使うのがよいのではないか。そう思う人もあるかもしれませんが、使用実態は「しなる/しならせる」の圧勝と言って差し支えないでしょう。

特に活用形によっては差が顕著になるようです。毎日新聞の記事データベースでは「~をしならせ」という形でヒットする記事は89件、「~をしなわせ」は2件(いずれも東京本本社版、地域面除く)。新選国語辞典(9版)の「しなる」の項目には「[参考]『しなう』をラ行に活用させてできた語」とあり、もしかすると基本形は「しなう」だと考えている人も、活用させると「しならせる」のようになる場合があるかもしれません。

予想としては「しなる/しならせる」の圧勝になるのではないかと感じていますが、結果はいかがなりますでしょうか。

(2019年10月31日)

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